遠藤周作『恋愛とは何か』(角川文庫1972年2月発行)の紹介

生活の知恵

はじめに

Hiro
Hiro

「最近の若者は恋愛をしない」とよく聞くようになりました。私の若い頃は,どうやって,誰と恋愛するか,ということが我々男性にとって大きな問題の一つでした。恋愛に関して,当時と真逆の世の中になりつつある,と私は実感しています。

Hiro
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恋愛する・恋愛しないは,当人が決めることなので,そのことについて,私は関知しません。ただ,恋愛したい人にとって大切な内容を狐狸庵先生(遠藤周作氏のこと)から学んだので,このブログでお伝えします。

Hiro
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ただ,狐狸庵先生は1923年生まれで,この本は1972年の発行ですので,この点については現代社会とは社会情勢が大きく異なることはご理解ください。

Hiro
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ただ,人間の基本的な行いは大昔と現代とそれほど大きく変わっていない,と私は考えています。以上の点を踏まえて,内容にはいっていきます。

Hiro
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狐狸庵先生が最初に考えることは肉体や性についてです。この2つのことは恋愛において決して避けて通ることができないものだからです。狐狸庵先生にある若い女性から届けられた一通の手紙が,ここにあります。その内容とは次のようなものです。

手紙の内容

「最近,私はある雑誌をひろげていましたらこんな質問を見つけました。恋人はその恋愛中,性の世界にまではいっていいかという質問なのです。
この質問にある女流作家の方が恋愛中は絶対にそんな世界にはいってはいけないとハッキリお答えになっていらっしゃいました。
けれども私は,自分はそんな経験はありませんけれども,もし恋人を真剣に愛するようになったら心だけではなく体も与えてしまうのは決して悪いこと,不潔なことではないと思います。むしろ結婚したら体を許すという従来の考え方よりは,この方がもっと純粋で誠実なような気がします。本当に二人が愛しあっているならば心だけではなく肉体も捧げたいという気持ちになるのは当然ではないでしょうか」
Hiro
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さて,ここでこの手紙の内容を踏まえての問題です。問題の正解は全て狐狸庵先生の考え方ですので,お間違えないようにお願いします

問題1.狐狸庵先生は,この手紙についてどのような考えを持っているでしょうか。以下の選択肢から1つ選んでください。
予 想
  • ア.本当に二人が愛しあっているならば,心だけではなく肉体も捧げたいという気持ちになるのは当然である。
  • イ.女性の心だけではなく,身も与えようとする愛情は純粋に違いない。また,見方によっては,誠実だと言える。
  • ウ.肉の交わりは恋人どうしには決して不潔ではない。けれども,それはやっぱり「かなしみ」を伴ったものである。
  • エ.その他

Hiro
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正解は,ウ.肉の交わりは恋人どうしには決して不潔ではない。けれども,それはやっぱり「かなしみ」を伴ったものである,になります。

Hiro
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狐狸庵先生は次のように書いています。

肉の交わりが爽快なスポーツ,後をひかぬ遊びと同じだったら,こういう悲しさは起こりますまい。一度,肉の世界を通過した以上,皆さんはたしかに変わってしまうのです。その夜の痕跡はたんに肉体の上だけではなく,あなたの心の上に何時までも残るでしょう。
いや心だけではない,時には人生の上にもはっきりと残るでしょう。考えてもごらんなさい。皆さんがはじめて愛した人のことを忘れられない以上に,はじめて純潔を捧げた人のことは生涯,心から消える筈はありますまい。たとえその人が貴方の人生から永久に姿を消し,貴方が彼とは全く無関係な境遇や世界に生きたとしても,彼の影はひそかに貴方の生の上に落ちていくでしょう。彼の愛撫の痕,彼が奪ったものは何時までも消えない筈です。肉の世界,エロスの交わりは今日,多くの人が軽く考えている以上に女性の人生に痕跡を与えるものなのです。
女性にとって肉体はまだまだ,最後のもの,そして最も大切なものであるという感覚や本能は残っています。危険なことは,この感覚や本能のため,肉体を与えた相手にたいして必要以上に執着してしまうことです。そしてその執着から自分の今後や人生を冷静に考慮する眼や自由さを失うことです。
Hiro
Hiro

私的に解釈すると,「愛とは肉欲によって満足できるものではない,また確かめられるものでもない」ということです。この解釈でいいのか,悪いのか,今の私にはわかりません。

Hiro
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狐狸庵先生は,「<情熱>と<愛>を混同しないように!」と何回も我々に伝えています。<情熱>と<愛>は全くの別物だからです。

Hiro
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「世間一般の人々は,<情熱>を<愛>だと勘違いしている場合が多い」と,狐狸庵先生は言います。

Hiro
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ここで問題です。

問題2.この<情熱>について狐狸庵先生は,具体的に,どのように表現しているでしょうか。次の選択肢から選んでください。ただし,正解は1つとは限りません。
予 想
  • ア.情熱は,誰でも持てる感情である。
  • イ.情熱は,不安や別離などによってかきたてられるものである。
  • ウ.情熱は,美化作用(結晶作用)をもたらすものである。
  • エ.その他

Hiro
Hiro

正解は,ア,イ,ウの全てです。

Hiro
Hiro

狐狸庵先生は,<情熱>を次のように書いています。

<情熱>は誰でも持てる感情である,という意味は蝶が花に群がるように,人は誰かを好きになるときに努力などいらないということです。誰でも人を好きになることができるということです。恋人同士になったら,相手に会えないときには,相手に対する思いが強くなったり,相手に対して不安になるときには,感情が高ぶったりすることがあるということです。美化作用(結晶作用)とは,俗に言う「惚れればアバタもえくぼ」という諺があるように,好きになった人を美化してしまう傾向が強いのです。結晶作用とは,炭鉱の中に投げ込んだ枯れ枝が塩分の結晶作用をうけてまるで花をつけた小枝のように変わることをいいます。あなたが誰かを好きになる,するとその人のなす事,言うことがすべて,美しく立派にみえることです。
Hiro
Hiro

ここで問題です。

 問題3.それでは,<愛>について狐狸庵先生は,どう書いているでしょうか。次の選択肢から1つ選んでください。
予 想
  • ア.愛とは,相手が好きという気持ちを持続させることである。
  • イ.愛とは,相手のことを思いやり続けることである。
  • ウ.愛とは,本能的なもの,衝動的なものではなく,意志と努力によって生まれてくるものである。
  • エ.その他

Hiro
Hiro

正解は,ウ.です。

Hiro
Hiro

狐狸庵先生は,「この<情熱>と<愛>との区別をはっきりさせるならば,恋愛とはまだ,<愛>以前のもの,<愛>のための準備ということができるでしょう」と,書いています。また,次のようにも書いています。

「その準備をもっと立派に果たすためには,何よりも恋愛を弄(もてあそ)ばないこと,やりはじめた恋愛を少なくとも完成させようとする意志からはじまるのです。完成させるためには,知恵が必要なのです」
Hiro
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狐狸庵先生は,これから恋愛を始める人にエールを送ります。「知恵を授ける」と言ってもいいかもしれません。恋愛を成功させるための狐狸庵先生流の知恵を,あなたにお伝えしましょう。知恵は,2つあります。

恋愛を成功させるための知恵

①女性は,ご自分の恋人に過度な要求を押し付けないでください。今の彼氏はまだ不安定で頼りないかもしれません。しかし十年後,十五年後に彼がどう変わるかを楽しみにしてらっしゃい。
②若い恋人たちは,二人でできる何か一つの目標を,恋愛中たえずつくったほうがよいのです。つまり,一つの目標をめがけて二人が歩いている,進んでいるという連帯感があなたたち二人を若さのもつ不安から救ってくれます。救ってくれるどころか,若さの特権である未完成から完成に進む悦びをたえず味あわせてくれるのです。

話は変わります

Hiro
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ここに2人の人物がいます。カザノバとドン・ファンです。この2人について説明しておきましょう。

カザノバは,1725年イタリアヴェニス生まれ,はじめは聖職者だったが醜聞のため投獄され,のち法律を学んでヨーロッパ各地を遍歴しました。機知と詭計(きけい:ペテンのこと)を弄し放蕩と漁色の半生を送ります。
ドン・ファンは,カザノバのように実在した人間ではありません。もともとスペインの芝居の主人公であった彼は後にイタリアのある戯曲にも登場し,更にフランスに渡ってモリエールの筆によって書き換えられ,イギリスのバイロンにも描かれた創作上の人物なのです。
Hiro
Hiro

このカザノバとドン・ファンは同じように女から女へと渡り歩いた漁色家,誘惑者です。しかし,この2人には本質的な違いがあります。

カザノバについて

①カザノバの漁る女というのは大半が娼婦だの,辻君だの,あるいは男の好きな小間物屋の女だの――要するに誘惑の際ほとんど抵抗もなく彼の手中に身を委ねる女性たちなのである。
②カザノバに捨てられた女たちは決してそのことを恨んだり,憎んだりはしない。むしろ彼と過ごした快楽の思い出を楽しく心にとどめ,懐かしんでいるという傾向があるのです。

ドン・ファンについて

①ドン・ファンの追いかけた女は,気位の高い貴族の夫人,サロンの夫人,つまり恋愛の心理や技術というものを習得し,容易には男の手練には屈しない女性だけをめがけたのです。
②ドン・ファンに捨てられた女は,ドン・ファンを非常に憎み,怨んでいるのです。
Hiro
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ここで,問題です。

問題4.ドン・ファンは,なぜたやすく手に入らない女だけを追いかけ,彼女を誘惑し,そして烈しい情熱でその女を愛したのでしょうか。次の選択肢から選んでください。ただし,正解は1つとは限りません。
予 想
  • ア.心から求めている理想の女性を探し求めていたから。
  • イ.女性の中に肉欲の満足以外のものを探していたから。
  • ウ.理想の女性はこの世に居ないと理解していたから。
  • エ.その他

Hiro
Hiro

正解は,ア.とイ.になります。

Hiro
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ドン・ファンは,現実の女性群の中からその理想の女性像に似た女を探し求め,それを恋人とし,妻としようとするのですが,不幸にしてこの世界では,そう,うまくは事が運びませんでした。彼はそのような完全な女性はこの地上に存在しないことをやがて悟るからです。

カザノバとドン・ファン,同じ誘惑者でありながら二人にはこのような大きな違いがありました。一方はたんに肉欲の満足だけのために女を漁った男です。他方はみたされぬ理想の女性像をこの地上にむなしく探し求めた男です。
愛というものは相手の中に発見するものではなくて,相手と共に創りあげていくものだということを知らなかったのでした。二人の男女が,たとえ人間として不完全であれ,たがいにこの人生に耐えながら,努力と忍耐とによって創りあげていく愛の成熟をドン・ファンは忘れていたのです。
Hiro
Hiro

ここで問題です。

問題5.愛には技術(テクニック)が必要である,と狐狸庵先生は考えているでしょうか。それとも,愛には技術(テクニック)が必要でない,と考えているでしょうか。
予 想
  • ア.愛には,技術が必要である。
  • イ.愛には,技術が必要でない。
  • ウ.その他

Hiro
Hiro

正解は,ア.愛には,技術が必要である,です。

Hiro
Hiro

狐狸庵先生は,「今後の若いあなたたちが,もう少し,恋の技術を考えてほしいと思っています。下手な恋のしかたのためにわざわざ自分たちを傷つけたり不幸になったりする多くの恋人たちの失敗をあなたが繰り返す必要はありません」と,言います

Hiro
Hiro

これから狐狸庵先生の愛の技術をみていきましょう。

簡単に書くと次の2つになります。

①恋愛(恋)に恋してはいけない。

本当の彼(彼女)に恋しているのか,自分が「恋にあまりに憧れたため」自分で飾りたてた彼(彼女)に恋をしているのか,考えてみましょう。これが,恋の技術の出発点です。

②嫉妬と恋愛とを混同してはいけない。

嫉妬は情熱の中で一番,炎を燃え上がらせる油なので「嫉妬と恋愛」を混同して,相手を見極めぬうちに,その幻影にひっかかったり,罠に足を入れたりすることが多いのです。
Hiro
Hiro

上の2つ以外にも事細かに恋愛の技術を狐狸庵先生は教えてくれています。気になる方は,本書を読んでみることをおすすめします。

Hiro
Hiro

そして,狐狸庵先生が言う愛について,もう一度まとめてこのレポートを終わりたいと思います。

情熱と愛は違う。情熱は恋人たちの不信,不安から,かえって生まれてくるものですが,本当の愛とは不信のかわりに信頼,不安のかわりに二人の男女の連帯から創りあげられるものなのです。
Hiro
Hiro

最後まで読んでいただき,ありがとうございました。

Shige
Shige

忙しい毎日です。

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