黒川伊保子さんが書いた『夫婦のトリセツ 決定版』(講談社α新書)の紹介をします。
黒川さんの前著である『妻のトリセツ』によって,妻の考え方が私には初めて理解できました。そして今回,幸せな夫婦になるための黒川さんからのアドバイスをあなたにお伝えしたいと思います。
今幸せな夫婦はもっと幸せに,それなりに幸せな夫婦は本当な幸せに,不仲な夫婦は新婚当初の気持ちに戻れるかもしれません。このページを読んだ結果,あなたがどうなるのか,私には分かりませんが,少なくとも相手を思いやる能力は高まるのではないかと思っています。
全ての人にとって,人生は一度きりです。あなたが結婚しているのであれば,パートナーと幸せに暮らして,人生の最後を迎えたいと思いませんか。
たとえ,あなたやあなたのパートナーが認知症になったとしても……。
本書の<はじめに>で,黒川さんは次のように書いています。
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女性脳の「共感してほしい」は反射神経。男性脳の「正義(真実・事実)を述べたい」も反射神経。
脳は,反射神経でしてしまうことを止めるのが,
最も強いストレスなのである。
この3つの答えは,たった1つだそうです。
さて,その答えはなんでしょうか。ここで,問題です。難しい問題ですが,気軽にお付き合いください。
予 想
- ア.心理的安全性(思いついたことを言っても(たとえそれがくだらないことでも,あるいは今の流れに逆らうようなことでも),受け入れてもらえるという安心感のこと)
- イ.そこに愛があるということ(相手に対して思いやりがいつもあること)
- ウ.人権が尊重されていること(一人ひとりが仲間から大事にされていること)
- エ.その他
正解は,ア.心理的安全性です。
黒川さんは次のように書いています。
グーグルで4年にも及ぶ社内調査の結果,成果の出せるチームとそうでないチームの違いはただ一つ,心理的安全性が確保されているかどうかだ,と言い切った。
自分の言ったことばが,おおむね,意図通りに相手に届く。相手からは,共感・ねぎらい・賞賛・感謝のいずれかが,返ってくる。
例えば,提案が通らなくても,発言した「気持ち」をわかってくれ,発言したという「行為」そのものは,ねぎらってくれることが約束されている――それが,コミュニケーションにおける心理的安全性である。互いにそういう関係になれたら,夫婦は永遠である……と。
なるほど,ということは教職員間にも成り立つと考えていいようですね。どの世界においても,このような心理的安全性が担保された組織やグループを作るのは難しいことなのか,あるいは簡単なことなのか,取り組んでみる価値は大いにあるかもしれません。
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「話が通じない」の正体
夫婦の対話が,なぜすれ違うのでしょうか。この世の対話方式には2種類あります。それは,「共感型対話」と「問題解決型」です。
黒川さんが,実に見事な例を挙げています。
共感型A「あんなことがあって」
共感型B「あ~,sれ,ムカつくよねぇ」
共感型A「こんなこともあって」
共感型B「うわ,そんなことまで……めげたでしょ」
共感型A「ひどいと思わない?」
共感型B「わかる。なにもかもうまく行かない日って,あるんだよね。今日は早く帰って,寝なよ」
共感型A「うん,ありがとう」
問題解決型A「今日は帰るね。明日,早出で挽回するわ」
問題解決型B「了解。私は,これをやり終えてからから帰るね」
問題解決型A「何かあったら電話して。9時までなら出られるはず」
問題解決型B「大丈夫,この工程に疑問はない。けど,9時までに,こっちの進捗メールしとく」
問題解決型A「サンキュー。お先!」
共感型 「あんなことがあって」
問題解決型「あなたもNOって言えばよかったのよ」
共感型 「こんなこともあって」
問題解決型「言ってくれれば,手伝ってあげたのに」
共感型 「ひどいと思わない?」
問題解決型「愚痴を言っても,仕事は終わらないよ。さっさとやろう」
共感型 「……(帰るって言えなかった)(泣)」
問題解決型「今日は帰るね。明日,早出で挽回するわ」
共感型 「わかるわぁ。こんなこと,やってられないよね」
問題解決型「……」
共感型 「あんなこともあったし,こんなこともあったし。私もさぁ」
問題解決型「悪いけど,お先」
共感型 「あ,うん……気を付けてね(私,あの人に,嫌われてる?)」
世の中の夫婦の会話の多くが,この「混ぜるな,危険!」の「すれ違いトーク」になっているのである。たいていの場合,妻が共感型,夫が問題解決型の対話形式を使うのだが,時と場合によって,逆転することもある。
さて,ここで問題です。
予 想
- ア.自分の話は共感で言い,相手の話も共感で受ける。
- イ.自分の話は結論から言い,相手の話は共感で受ける。
- ウ.自分の話は共感で言い,相手の話は問題解決型で聞く。
- エ.自分の話は結論から言い,相手の話は問題解決型で聞く。
- オ.その他
正解は,イ.自分の話は結論から言い,相手の話は共感で受ける,です。ここで,達人同士のトークを見てみましょう。
対話の達人A「今日は帰るね。明日,早出で挽回するわ」
対話の達人B「いろいろあったものね,ゆっくり休んで。今夜中にこっちの進捗メールしとくね」
対話の達人A「ありがとう。あなたも夕飯は,ちゃんと食べてよ。お先に」
対話の達人は,結論から言うが,相手へのねぎらいを残して帰る。達人トークは,他人のためだけじゃない。自身の評判もかなり上がる。結論から簡潔に述べれば,「頭がいいわ。できる人」と言われ,ライトな感覚で返せば,「余裕があって,大人」と言われる。
私は,男性から,「女性はなぜ,質問にちゃんと答えないのでしょうか?」と質問されることがある。
例えば,次のような感じです。
夫「今年,お母さんの七回忌だね。いつにしようか」
妻「そう言えば,お父さんの七回忌のとき,○○のおばさまが,茶碗蒸しが冷めてたって 言ってたでしょ。あそこの仕出し料理,使えないよねぇ」
夫「5月の2週目はどう?」
妻「あ,そう言えば,喪服はいるかなぁ。最近太ったし」
さて,ここで問題です。
予 想
- ア.女性は問題意識が先に行っていて,本当は答えているが話が通じていないだけである。
- イ.男性は,数字を期待しているから女性が質問に答えていないように見えるだけである。
- ウ.女性は,物事を総合的に判断するために,〇月〇日と直ぐには決められないから。
- エ.その他
正解は,イ.です。
しかし,アやエも間違いではありません。
よって,アイウのどれを選んでも正解です。
アイウ全てを選んだ人は,大正解になります。
もう少し丁寧に説明すると,女性の脳は次のようになります。
夫「今年,お母さんの七回忌だね。いつにしようか」
妻「そう言えば,お父さんの七回忌のとき,○○のおばさまが,茶碗蒸しが冷めてたって言ってたでしょ。あそこの仕出し料理,使えないよねぇ」
夫「そうだったなぁ。新しいお店見つける?」
妻「となると,日程がその店の空き状況にも左右されるから,先ずお店を検索しない?」
妻「あ,そう言えば,喪服はいるかなぁ。最近太ったし」
夫「そうかなぁ」
妻「夏の喪服なら余裕があるから,5月の末か6月がいいな」
「いつ?」と聞いたら,日付が返ってくると信じて,数字の認知モードに入っている夫の脳は,それ以外の答えを繰り出す妻に戸惑い,2歩も3歩も先に行っている妻は,話について来れない夫にイラつく。
これが度重なれば,夫が妻を「とっ散らかってる。論理的じゃない」と思い込み,妻が夫を「頭の回転が悪い朴念仁」と思い込む。もちろん,どちらも濡れ衣である。対話方式が違うって,かくも恐ろしいことなのである。
もしも,妻の頭上の天井が崩れてきたら,夫たちは,迷うことなく,妻を救おうとするだろう(腕を引くか,覆いかぶさるか)。その同じ感覚で,妻が「今日起こった悲しい出来事」を話したとき,とっさに「きみもさぁ,嫌なら嫌って言えばいいのに」と言うのである。その災難から,いち早く,立ち退いてもらうために,“愛する人の腕を引いた”のである。
実際,男性たちは,その辺のどうでもいい女性との会話なら,「そりゃ,たいへんだったね」なんて,テキトーに聞き流せるのである。彼女の命に責任がないから,目くじら立てて「こうしなきゃ」なんて言う必要がない。なのに,女性たちときたら,この無責任男の方が「わかってくれる優しい人」と感じたりするから,この世の男女の縁は,こじれていくのである。
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妻語翻訳&模範解答
夫の皆さま,次にあげる「なじることば」は,女性が,愛を確かめるときの決まり文句である。だから,怖がらないで,「欲しがっている答え」を言ってあげてほしい。
あ行 「あっち行って!」
翻訳 「めちゃくちゃ,傷ついてるんだよ。ちゃんとあやまって」
模範解答「本当にごめん。許してくれるまで,ここにいる」
か行 「勝ってにすれば」
翻訳 「勝手にしたら許さない」
模範解答「そんなのやだよ。ちゃんと許してほしいんだ」
さ行 「自分でするからいい」
翻訳 「普通は,男子がやるよね。自分でするなんて,悲しすぎる」
模範解答「そんなこと言わないで,僕にやらせてよ」
た行 「どうしてそうなの?」
翻訳 「なんで,何度も同じことをするの!?あやまって!」
模範解答「嫌な思いさせてごめん」
な行「なんでもない」
ここで問題です。少し難しいので,よく考えてください。
翻訳 「 」
模範解答「 」
正解は,次のようになります。
翻訳 「これって,ひどくない?そのことに気づいてくれないあなたに,失望してる」
模範解答「気が利かなくて,ごめん」
あくまで黒川さんの思いですので誤解のないようにお願いします。断っておきますが,あなたの妻が同じような反応をするとは限りません。
面白いので,黒川さんの例文の続きをもう少し書きます。
は行 「一人にして」
翻訳 「この状況で一人にしたら,絶対許さない」
模範解答「どこにも行かない。きみを一人にしたくない」
ま行 「みんなわたしが悪いんだよね」
翻訳 「私の気持ちそっちのけで,ああすればよかった,こうするべきだったって,あなた誰の味方なわけ?」
模範解答「悪いのは,きみじゃないよ。余計なこと言って,ごめん」
や行 「やらなくていい」
翻訳 「そんなに嫌そうにするなら,もうやらなくていい。家事なんて,全部,私がやればいいと思ってるんだよね」
模範解答「もちろん,やるよ。段取りを考えてただけなんだ」
ら行 「理屈じゃないの」
翻訳 「あなたの言うことはたしかに正論だけど,私は嫌なの」
模範解答「きみが嫌なら,もう言わないよ。きみのためなら,世界を敵に回してもいい」
わ行 「別れる」
翻訳 「言っちゃった。言っちゃった以上,退けないから,なんとかして」
模範解答「別れない」
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男性脳の秘密
女たちはおしゃべりで心を癒す
女性脳が,おしゃべりに対して好感度が高いのは,おしゃべりで生存可能性を上げてきたからだ。
例えば,「幼児が,いきなりつかまり立ちして,鍋の中に手を入れそうになって,ぞっとした」なんていうことが起こった翌日,母親は,それをママ友にしゃべらずにはいられない。心がゆれれば,ことばにする。それが共感型の基本だ。
その話を聞いて,「うわ。怖いね~」と共感した側にも利がある。他人の体験を,脳が疑似体験するので,自分は,子どもを一切危険な目に遭わせていないにもかかわらず,今後お鍋を出すとき,無意識のうちに,子どもの立ち位置を確認することになる。
男性たちは,沈黙で,生存可能性を上げてきた。
こちらは,何万年も狩人だったのである。森や荒野を行くとき,狩人たちは寡黙だ。風や水の音で,先の地形の展開を知り,獣の気配も聞き逃すわけにはいかないから。「目の前の人のおしゃべりに共感すること」ではなく,「周囲を察知すること」に,脳神経信号を振り分けていないと,狩人は,生きて帰れない。
目の前の人が,目的のわからない話を延々と展開すると,脳が危険信号を発して,なんと音声認識を停止してしまうのである。目の前の人の音声を,ことばとして認識せず,ただの音響として聞き流す。音量も,脳が勝手に絞ってしまうらしい。このため,妻の話がモスキート音のように聞こえるという。
「来週の火曜日,保育園にお迎え行ける?」「ああ」
「本当に?」「うん」
みたいなやりとりが,彼の耳には,
「ほえほえほえ,ほえほえほっほ~?」
「ああ」
「ほえほ?」
「うん」
だったりするわけだから,翌月曜日の夕方,問題が勃発するわけだ。
「明日よろしくね」
なんのこと?」
「保育園のお迎えに決まっているでしょ」
「いや,聞いてない」
「えーっ,あなた,2回も返事したじゃん」
「……」
みたいにね。
申し訳ありません。
この対処法については,本文を読んで研究してください。
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女性脳の秘密
妻たちの「そう言えば」で命が救われている
父がある日,昼寝から目覚めなかった。息はしているのだが,呼んでも叩いても,いっこうに反応がない。走って30秒ほどのところに住んでいる私に連絡がきたので,駆け付けて救急車を呼んだ。
救急隊員が部屋に上がってきて,最初の質問が「奥さん,旦那さんは,いつからこの状態ですか?」だったのだが,母が,こう答えたのである。「お父さん,夕べ,カレーライスをお替わりしたんです」
「お母さん,お父さんがいつからこうなのか,聞いているのよ」と,私が口を挟んでも,また「夕べね,お父,さんが」と繰り返す。
すると救急隊員が私を制して,「こういうときは,話をしてもらったほうが早いんです」と言って,「それで?」と母を促した。母の話は,こう続いた。「お父さんは糖尿病だから,4切れ以上食べたらだめなのに。私は,朝から,それが気になって,薬飲んだか何度も確かめたのに,飲まなかったのかしら」
すると救急隊員が,「逆に,奥さんに何度も言われて,倍飲んじゃったのでは?薬の袋を確認できますか?」
救急隊員が指摘した通り,糖尿病の父は,血糖値を下げる薬を倍量飲んで,意識混濁状態に陥ったのである。(血糖は脳の神経信号の唯一のエネルギーなので,血糖値が低すぎると意識がなくなる)。
母の記憶のおかげで,すみやかに原因が判明して,父は搬送先がすぐに決まり,ブドウ糖液の点滴を受けて事なきを得た。
救急隊の方がおっしゃるには,「ご家族が,質問にまっすぐに答えず,記憶を語り出すのは,本当によくあることで,その中に,症状のヒントが見つかることも多い」のだそう。
主婦は「そう言えば」で家事も回す。「そう言えば干し椎茸……水につけとこう。帰ったらすぐ筑前煮を作れるから」「そう言えば,ケチャップ……もう残り少なかったよね。安くなってるから買っていこう」のように。
家事はとりとめのない,溢れる多重タスクで,計画的にこなすことなんて,到底できない。
以下,<ためになるお話>がず――と,続いていきます。
申し訳ありません。
この,<ためになるお話>については,本文を読んでください。
最後に,私なりに黒川さんが言いたいことを超簡単にまとめます。
男性脳と女性脳はほとんど同じだけども,違う面もあります。男性と女性の脳は,大昔からの生き方の違いによって創られてきたからです。
なので,男性と女性は互いに補完しあうようになっています。得意分野が違うということです。
よって,男女互いに助け合って,思いやりをもって暮らしていきましょう,ということだと私は理解しました。
この本は,各家庭に1冊置いておく必要があるかもしれないと感じました。
また,この本を結婚した大人達が読んだら,もしかしたら,離婚率が下がるかもしれないと思いました。
最後まで読んでいただき,ありがとうございました。
たまにはパートナーの方と温泉旅行などいかがでしょうか。
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