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エマニュエル・トッド,片山杜秀,佐藤優著『トッド人類史入門』(文春新書2023年3月発行)の紹介2回目

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サークルレポート
Hiro
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 先の文春新書『トッド人類史入門』の紹介の中で「最も新しい」と思われてきた核家族が,実は原発のホモ・サピエンスと同じで「最も原始的」だった,とトッド氏が指摘していることについてお伝えしました。

Hiro
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 トッド流に言うと<「最も原始的な家族構成」であるがゆえに「最も先進的な社会」を築き上げたという,とても興味深い歴史のパラドックスが描かれている>ことだそうです。

Hiro
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 さて,今回は<ウクライナ戦争と西欧の没落>について,トッド氏の考えをあなたにお伝えできたらと思います。

Hiro
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 いつものように問題を解いていただきながら,トッド氏の考えに迫っていきたいと考えます。問題の答えには選択肢がありますので気楽に考えてください。よろしくお願いいたします。

Hiro
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 なお,気をつけて頂きたいのですが,トッド氏の考え方が正しいのか正しくないのかは,誰にもわかりません。トッド氏の考え方は1つの仮説として捉えてください。正しいかどうかについては,おそらく,歴史が証明してくれることになるでしょう。

Hiro
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早速,ここで問題です。

問題1.トッド氏は,これからの世界を予言しています。トッド氏は,どんな予言をしているとあなたは思いますか。次の選択肢から選んでください。答えは1つとは限りせん。
 予 想
ア.「アングロサクソン的なもの」が破綻する(アングロサクソン的なものとは,個人至上主義のことです)
イ.「ロシア的なもの」が新しい活力として浮上してくる(ロシア的なものとは,社会の創造性のことです)
ウ.中国が世界で覇権を握る可能性がある
エ.その他

Hiro
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正解は,ア,とイ,の2つです。

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ウ.について,トッド氏は反対のことを言っています。つまり,「中国が世界で覇権を握る可能性は無い」ということです。この問題の答えの理由を1つずつみてみることにしましょう。

〇「アングロサクソン的なもの」が破綻するについて
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本書48ペから抜き書きします。

  英米型の個人主義が1つの限界を超えてしまったという認識です。何らかの「集団」なくしては「個人」も「個人」であり得ない。英米の超個人主義の誤りは,「集団」なしに「個人」が存在する,という考えに至ったことです。ところが,「利己的なホモ・エコノミクス(経済人)」にしても,真空の中で行動するわけではなく,その行動を規定するものとして,家族,宗教,国家といった枠組みが存在します。ところが,グローバリズムが進むなかで,西洋のエリートは,「集団抜きの絶対的個人が普遍的に存在しなければならない」と頑なに信奉するようになり,この信仰を共有しない人々を「集団主義的」「専制主義的」と一方的に排斥するようになりました。西側メディアに蔓延している「ロシア恐怖症」がその典型例です。これは私には,個人がアトム化し,社会的な連帯感が失われ,国家として方向性を見失って虚無感に襲われている「西洋」自身のヒステリーの現れにしか見えません(ちなにに「ロシア恐怖症」が生まれた起源はメディアそれ自体だったことを,アンドレイ・ツィガンコフの『ダーク・ダブル――米国のメディア,ロシア,価値観の政治学』が明らかにしています。今日,最も自由を手にし,独善的に権力を振るっているのは,政治よりも上位に位置しているメディアです。民主主義に報道の自由は不可欠だとしても,この思想としての「ジャーナリズム主義」を問題にすべきです)。
〇「ロシア的なもの」が新しい活力として浮上してくるについて
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本書50ペから抜き書きします。

 プーチン演説(2022年10月27日モスクワ郊外で開催されたヴァルダイ会議)を読んで私が思ったのは,「英米の覇権主義が,逆説的にもロシア史に新たな普遍的意味合いを与えている」ということです。ロシアは,英米と対抗するなかで,結果的に,世界における「保守的な勢力」を代表するようになり,普遍的な役割を担うようになりました。
 これを私は「普遍主義的特殊主義」と名づけています。特殊性の普遍的な権利,つまり,あらゆる文明,あらゆる国家がそれぞれのあり方で存在する権利を認めていこうという考え方です。単一のルールや世界観を一律に押しつける英米のヘゲモニーに挑戦するロシアの普遍主義的特殊主義は,世界におけるロシアの「ソフトカバー」を構成しつつあります。より根底にある「家族システム」が,ロシアを動かしていると私は見ています。
〇中国が世界で覇権を握る可能性は無いについて
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本書60ペから抜き書きします。

 第1に,中国の女性の地位はロシアのそれよりも低いので中国は,ダイナミックな社会ではないということです。第2に,出生率が1.16の国が覇権を握ることはあり得ません。第3に,中国の最大のアキレス腱である人口問題です。新生児の性比にも現れています。新生児は男児の方が多く,自然状態では女児100人に対して男児105人~106人です。この指標は107でも選択的堕胎(出生前診断による女児胎児の堕胎)が疑われますが,中国は,118(2010年頃)という異常値です。女性の地位の極端な低さを反映していると同時に,将来の歪んだ人口構成を浮かび上がらせています。第4に,中国はその人口規模からして,人口減少を他国からの移民で補うことが物理的に不可能です。したがって,中長期的に見て,対外的に脅威となるより,内部崩壊するリスクが高いのです。

Hiro
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トッド氏は,日本の現状について次のように書いています。

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本書55ペから抜き書きします。

 現在,日本が米国を中心とする西洋圏,自由主義圏に所属しているのは,第二次世界大戦で米国に敗北したことの帰結であって,それ以外の何ものでもありません。米国は,なかなか賢く,天皇の地位を保全し,共産圏に対抗する形で日本経済の発展を支援しました。その結果,日本は現在のような国際的な地位を得たわけですが,その「地位」とは何かと言えば,「米国の保護領」でしかありません。現在の日本は,「独立国」としての自由や自律性を享受していないのです。人類学的に見れば,ネイションとしての日本の気質は,アングロサクソンとは正反対です。その違いをごまかさなければならず,価値観次元での表面的な言説と,利益次元でのリアルな行動の間に矛盾が生じているのではないでしょうか。
 しかし,日本も,今後,その矛盾に直面せざるを得なくなり,「保護領」からの脱却を本気で考える必要に迫られるのではないでしょうか。

Hiro
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 悲しいかな,現状の日本は,トッド氏が書いているような「米国の保護領」でしかないのです。つまり,日本がアメリカに支配されている状況は次のような図式になると私は考えます。

日米地位協定 → 日米合同委員会 → 日本国憲法 → 法律 → 条例・・・
Hiro
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 日本国憲法より米軍の方が上なのです。よって,米軍は日本ではどんなことでもできます。日本の国全域を米軍基地にすることだって可能なのです。悲しいかな,日本人の人権は米軍の前では無いに等しいのです。

Hiro
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 いつの日か,このいびつな日本の状態を変えなくてはいけません。それには,日本国民が本当の現実を知ることから始めなければなりません。少しずつですが,この日本の現状を知る人が増えていますが,知る人が圧倒的に少ないのも事実です。しかも,日本のメディアは事実を知っていながら本当のことは絶対に言いません。おそらく本当のことを国民に知られると困る人がいるのでしょう。

Hiro
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ここで問題です。

問題2.「もうすでに第三次世界大戦は始まっている」と,トッド氏は書いています。その理由は何でしょうか。次の選択肢から1つを選んでください。
 予 想
ア.プーチン氏の心のなかではすでに,第三次世界大戦が始まっているから
イ.人類は大転換期を迎えていて,英米主導の近現代が,深刻な危機に晒されているから
ウ.ロシアは,英米と対抗するなかで,結果的に,世界における「保守的な勢力」を代表するようになってきているから
エ.その他

Hiro
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正解は,ア.プーチン氏の心のなかではすでに,第三次世界大戦が始まっているから,です。

Hiro
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本文45ペから抜き書きします。

 2022年9月末から,ロシアにとってウクライナ戦争の目的が明らかに変化しています。以前は「ロシア系住民の保護」と言っていたのが,「ゼレンスキー政権は傀儡にすぎず,主たる敵は米国を中心とする西側連合だ」と明言しています。
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ヴァルダイ会議でプーチン氏はこう述べています。

 <今起きていることは,例えばウクライナも含めて,ロシアの特別軍事作戦が始まってからの変化ではありません。これらの変化はすべて,何年も長い間,続いています。(略)これは世界秩序全体の地殻変動なのです>
 <ソ連の崩壊は,地政学的な力のバランスも破壊しました。欧米は勝者の気分になり,自分たちの意志,文化,利益のみが存在する一極的な世界秩序を宣言しました。今,世界情勢における西洋の独壇場は終わりを告げ,一極集中の世界は過去のものになりつつあります。私たちは,第二次世界大戦後,おそらく最も危険で予測不能な,しかし重要な10年を前にして,歴史の分岐点に立っているのです>(プーチン氏発言はいずれも佐藤勝訳)
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長くなりますが,プーチン氏の発言をもう少し書かせてください。

 彼らは今,道徳,宗教,家庭を徹底的に否定する方向に進んでいます。(略)私たちは,小学校から学校で,(略)男性と女性以外に性別があることを教え,性転換手術を受けさせるのか?(略)このようなことは,私たちには受け入れられません。私たちには,自分たちの別の未来があるのです。(略)西側エリートの独裁は,西側諸国の国民を含むすべての社会に向けられています。全員への挑戦状です。このような人間の完全否定,信仰と伝統的価値の破壊,自由の抑圧は,「宗教を逆手に取った」,つまり完全な悪魔崇拝の特徴を帯びているのです。
 民族や文明の特殊性を尊重することは,すべての人の利益に適います。(略)西側少数民族の文化的独自性に対する権利は,もちろん保障されるべきであり,敬意をもって扱われるべきですが,他のすべての人々の権利と同等であることを強調しておきたいと思います。(略)西側と違って,私たちは他人の裏庭に干渉しないのです。(プーチン氏発言はいずれも佐藤勝訳)
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 ロシアと日本の今までの関係を考えに入れずにプーチン氏の発言のみを考えた場合,私は,プーチン氏が言っていることの方が人類の進むべき道のような気がしています。あなたは,プーチン氏の考え方をどう思いますか。

Hiro
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ここで,あなたに質問です。

 質 問
ア.プーチン氏の考え方に賛成する
イ.プーチン氏の考え方に反対する
ウ.どちらとも言えない
エ.その他(自分の考え)
Hiro
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トッド氏は,次のように書いています。

Hiro
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本書48ペから抜き書きします。

 いま人類は大転換期を迎えていて,英米主導の近現代が,深刻な危機に晒されています。私はプーチンのように,そこにサタニズム(悪魔崇拝)を感じるわけではありませんが,英米型の個人主義が1つの限界を超えてしまったという認識です。何らかの「集団」なくしては「個人」も「個人」であり得ない。英米の超個人主義の誤りは,「集団」なしに「個人」が存在する,という考えに至ったことです。ところが,「利己的なホモ・エコノミクス(経済人)」にしても,真空のなかで行動するわけではなく,その行動を規定するものとして,家族,宗教,国家といった枠組みが存在します。
Hiro
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49ペから抜き書きします。

 ところが,グローバリズムが進むなかで,西洋のエリートは,「集団抜きの絶対的個人が普遍的に存在しなければならない」と頑なに信奉するようになり,この信仰を共有しない人々を「集団主義的」「専制主義的」と一方的に排斥するようになりました。西側メディアに蔓延している「ロシア恐怖症」がその典型例です。これは私には,個人がアトム化し,社会的な連帯感が失われ,国家として方向性を見失って虚無感に襲われている「西洋」自身のヒステリーの現れにしか見えません(ちなみに「ロシア恐怖症」が生まれた起源はメディアそれ自体だったことを,アンドレイ・ツィガンコフの『ダーク・ダブル――米国のメディア,ロシア,価値観の政治学』が明らかにしています。今日,最も自由を手にし,独善的に権力を振るっているのは,政治よりも上位に位置しているメディアです。民主主義に報道の自由は不可欠だとしても,この思想としての「ジャーナリズム主義」を問題にすべきです)。プーチン演説を読んで私が思ったのは,「英米の覇権主義が,逆説的にもロシア史に新たな普遍的意味合いを与えている」ということです。ロシアは,英米と対抗するなかで,結果的に,世界における「保守的な勢力」を代表するようになり,普遍的な役割を担うようになりました。
 これを私は「普遍主義的特殊主義」と名づけています。特殊性の普遍的な権利,つまり,あらゆる文明,あらゆる国家がそれぞれのあり方で存在する権利を認めていこうという考えです。単一のルールや世界観を一律に押しつける英米のヘゲモニーに挑戦するロシアの普遍主義的特殊主義は,世界におけるロシアの「ソフトパワー」を構成しつつあります。ただ,ここだけはプーチンと違って,「宗教」がそうしたロシアの特性を表していると考えません。より根底にある「家族システム」が,ロシアを動かしていると私は見ています。
Hiro
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 トッド氏の考えは,「家族システムによって国が動いていく」といった感じでしょうか。それぞれの国はそれぞれの家族システムによって成り立っていて,外交などの考え方にも家族システムの考え方が色濃く反映されているのかもしれません。片山氏もトッド氏の考え方から大きな影響を受けています。

Hiro
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ここで最後の問題です。

問題3.片山氏は,日本の戦前と戦後について日本人の家族関係の考え方によって読み解くことができると書いています。それはどんな考え方だと思いますか。次の選択肢から選んでください。ただし,正解は1つとは限りません。
予 想
ア.戦前の日本のエリートたちは,どの国も同じ一票を持つといった国際連盟のような仕組みに不満を覚えていました。まさに「兄は弟より発言権を持って当然だ」というメンタリティーです
イ.アジアでは,日本が「長兄」として他国を従えるというロジックが,中国から,インド,東南アジアまで通用するはずだ,と無意識にも思い込んでいたのです
ウ.戦前,「アジアの長兄」として振る舞った日本は,戦後は「米国の弟分」になったと考えることができます
エ.国家間関係も,対等な関係ではなく,兄か弟かでしか考えられず,自国が力を持っている時には,「兄」として振る舞い,自国の力が弱くなれば,「弟」としての立場に甘んじることになります
オ.その他

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正解は,ア・イ・ウ・エの全てです。片山氏はさらに次のようなことを述べています。

Hiro
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本書58ペから抜き書きします。

 京都学派や右翼的なアジア主義者などは,アジアをリードできるのは「長兄としての日本人」だ,という認識が広く共有されていたわけです。しかし,そんな独りよがりは通用しません。アジア各地の家庭構造や社会の違いに関する知識も欠いたまま,「アジアは一つ」でまとめてみようとしたことが,そもそもの間違いで,結局,米国に負けてしまいました。それに対して,米国に屈服させられた戦後の日本人は,長子優先の日本の伝統的な家族のあり方を「封建的だ」と否定して,米国流の核家族に「理想の家族モデル」を見ました。そして経済大国となった後は,自らの家族や社会のあり方も,アングロサクソン的なモデルで説明できるつもりになっていました。ところが,三世代同居が実際には見られなくなっても,直系家族に由来する価値観は,簡単に消え去るわけではない。トッドさんにそう指摘されて,納得する読者も多いと思います。
Hiro
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トッド氏は次のようにも書いています。

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本書59ペから抜き書きします。

 ここでロシアと日本を比べると,英米のヘゲモニーに対して,どちらも独立を求めるとしても,日本の場合には,「諸国民は平等だ」という考え方が希薄なので,自国の独立のみを求めることになります。そこがロシアと違って,ヴァルダイ演説のように,すべての国に独立する権利があるというビジョンになる。ロシアの「普遍主義的特殊主義」に対して,日本は,自国の独自性のみを追求する「特殊主義的特殊主義」であると(笑)。

Hiro
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 いかがでしたでしょうか。この本を読むと,新しい物差し(ここでは,家族構成)を持って来て,世界を見ると今までにない見方ができるという典型例のような気がしています。

Hiro
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 国の最小単位である,個人とその家族構成を考えることによって,国のあり方や国際関係が理解できて,世界がどうなるのか予測までできるとは「すばらしい」と,私は思いました。

Hiro
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 実は,このレポートに書ききれなかった内容が,まだまだたくさんあります。あなたに時間がありましたら,ぜひ一読してください。今の国際情勢が見えてくるようになるかもしれない,お勧めの一冊です。

Hiro
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おまけ

佐藤氏は次のように言います。
トッド氏は,ハラリ氏が書いた『サピエンス全史』を紛(まが)い物だと思っているようです。(実際にはトッド氏は何も書いていません)
片山氏は次のように言います。
「人類は飢餓,疾病,戦争という問題を解決しつつある」(『ホモ・デウス』)というハラリは,トッドさんからすれば,まさに「偽預言者」でしょう。
Hiro
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トッド氏に言わせると,ハラリ氏は,どうも歴史家では無いのかもしれません。ハラリ氏はダボス会議に呼ばれて基調講演を2回(2018年と2020年)しています。トッド氏は,ダボス会議によばれたことはありません。

言葉の意味:
ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)=世界のエリートたちが,一堂に会すると言われています。
Hiro
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トッド氏の『我々はどこから来て,今どこにいるのか?』(人類史)も機会があれば読んでみたい本の1つです。

Hiro
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最後まで読んでいただき,ありがとうございました。

Shige
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