田坂広志著『すべては導かれている』(小学館2017.12.3発行)の紹介
今回紹介させて頂くのは,田坂広志著『すべては導かれている』という本になります。読んでみると,自分に新しい生き方を示しているようで,たいへん参考になりました。みなさんにも紹介する価値があるだろうと判断したので,このレポートにまとめることにしました。
いつものような問題設定はしていませんので普通に読んでくださるよう,お願いします。
それでは,早速本書の内容を紹介します。
田坂さんは,1983年の夏,(私が結婚した年です)医者から「もうそれほど生きられないだろう」と告げられました。その後,田坂さんはそのときの気持ちを次のように書いています。
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現代の最先端医療でも,命を助けてもらえないとの絶望感。
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自分の命が刻々と失われていく恐怖。
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「悪夢」という言葉が生易しい言葉に思える日々。
なぜなら,それが「悪夢」ならば,どれほど恐ろしい夢でも,目覚めれば,その夢は消えていく。
しかし,現実は全く逆。
寝ている間は,その病気を忘れていることができる。しかし,目が覚めれば,その死に至る病が現実。深夜に目が覚め,目の前に死が迫ってくる恐怖に押しつぶされそうになる日々。
それは,文字通り,地獄のような日々でした。
そして,田坂さんは藁にもすがる思いで一人の禅師に出会います。両親からある禅寺に行くように勧められたのです。
その禅寺は,難病を抱えた人々が行き,そこで何かを掴み,その病を克服して戻ってくるという不思議な場所でした。
しかし,その禅寺に行ってみると,毎日,鋤(すき)や鍬(くわ)を持って畑を耕す労働の日々でした。九日目,その寺の禅師とやっと接見の機会が与えられました。
禅師が語りました。
「そうか,もう命は長くないか・・・」
「だがな,一つだけ言っておく。人間,死ぬまで,命はあるんだよ!」
この言葉を聞いて,田坂さんは,「何と当たり前のことを」と思ったそうです。そして,「だから何なのか」と思ったと書いています。
禅師は,その言葉に続き,もう一つの言葉を静かに,力強く語りました。
「過去は,無い。未来も,無い。有るのは,永遠に続くいま,だけだ。いまを,生きよ!いまを,生ききれ!」
田坂さんは悟ります。
この病が与えられてからの自分は,過去を悔いることと,未来を憂うることにかけがえのない時間と精神を費やし,いまを,生きてはいなかった,と。
しかし,そのことに気がついた瞬間から,私の人生が変わりました。このとき,私は,思い定めたのです。
ああ,この病で,明日死のうが,明後日死のうが,構わない。それは仕方ない。それが,天の与える寿命であるならば,仕方ない。与えられた今日という一日を,精一杯生きよう。そう思い定めたのです。
ここから,田坂さんが考える人生について書いていきます。
1.自分の人生は,大いなる何かに導かれている。
あの人と出会ったことで,人生が好転した。
自分(ヒロじい)の場合は,仮説実験授業を自分に教えてくれた,中野さん。そして,授業科学(仮説実験授業)と哲学を教えてくれた板倉さんになります。
2.人生で起こること,すべて,深い意味がある。
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自分の人生は,大いなる何かに導かれている。
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人生で起こること,すべて,深い意味がある。
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この苦労は,自分に,何を教えようとしているのか。
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この挫折は,自分に,何を掴ませようとしているのか。
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この病気は,自分に,何を伝えようとしているのか。
こうしたことを考える力,それが「解釈力」です。何が起こったか。それが,我々の人生を分けるのではない。起こったことを,どう解釈するか。
それが,我々の人生を分ける。
いかなる失敗や敗北が与えられたとしても,その逆境を糧として,我々は,人間として「成長」していくことができる。
会社の部長だった田坂さんは,ある大きなプロジェクトが吹き飛びそうになったとき,2人の部下にかっこいい言葉を投げかけます。私が読んで,涙が出そうになるくらいかっこいい言葉です。その言葉は,ここに書きません。ぜひ本書を手に取って読んでみてください。
3.人生における問題,すべて,自分に原因がある。
たとえ,自分に直接の責任が無いことでも,すべてを,自分自身の責任として,引き受けること。
なぜ,この引き受けという姿勢が大切なのか。それは,「静かな強さ」を身につけることができるからです。「魂の強さ」と言い換えてもいい。
人間は,本当の自信がなければ,謙虚になれない。
人間は,本当に強くなければ,感謝ができない。
4.大いなる何かが,自分を育てようとしている。
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だからこそ,この逆境は,必ず乗り越えられる。
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だからこそ,この逆境を糧として,必ず成長していける。
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あなたは,逆境のときに成長したのです。
5. 逆境を超える叡智は,すべて,与えられる。
直観という形で与えられます。人生の難題に直面したとき,心を整え,「この問題,導きたまえ」と祈る。全詫とは,「すべてを天に託する」という覚悟のこと。「すべてを天に委ねる」という覚悟のこと。直観は無心のときに閃く。
「大いなる何かが,この問題の答えを教える」と信じ,その問題の解決を「全詫」したときにも生まれます。予感という形で与えられます。
「コンステレーション」を感じる,という形で与えられます。
「シンクロニシティ」が起こる,という形で与えられます。
「運気」を引き寄せる,という形で与えられます。
6.なぜ,人生で不思議なことが起こるのか。
人間の心は深いレベルで互いに繋がっているという仮説があります。
「ゼロポイント・フィールド仮説」「アカシック・フィールド仮説」にもつながっています。この宇宙は,「量子真空から生まれた」という理論です。「この宇宙において起こったことのすべての情報が,量子真空の中に記録されている」という仮説です。
我々は,通常の意識の中では,人生というものを,
「幸運と不運」「幸福と不幸」「安楽と苦労」「順調と困難」「成功と失敗」「勝利と敗北」「達成と挫折」「獲得と喪失」「健康と病気」「安全と事故」
という形で,「良きこと」と「悪しきこと」という2つに分けます。
しかし,対立的に捉える「分離・対立の思想」を抱くかぎり,怒りや憎しみ,悲しみや嘆き,後悔や自責,不安や恐怖は,決して無くならないのです。
禅師の言葉によって,「いまを生き切る」という覚悟を定め,「今日という一日を,精一杯生きよう。そして,今日という一日,与えられた出来事を通じて,成長していこう」という覚悟を定めたとき,1つの思いが心に浮かびあがりました。
それは,「すべては導かれている」という思いでした。
そのとき,私の心から「負の理念」が消えたのです。
7.あなたは,すでに,逆境を超えている
いかなる逆境であっても,「すべては導かれている」という覚悟を定めるならば,我々の心の奥深くから,不思議な力と叡智が,湧き上がり始めます。
「人生をすべて肯定する」ためには,深く求められることがあります。それは,何か。
「死」を見つめることです。
「死を見つめる」とは何か。
3つの真実を直視することです。
それは,
人は,必ず,死ぬ。
人生は,一度しかない。
人は,いつ死ぬか,分からない。
この「3つの真実」を直視することです。
「死」があるから「生」が輝く。
たとえ明日,この人生が終わりになろうとも,力を尽くして歩み,成長していく。
そして,我々の心の奥深くには,不思議な力と叡智が眠っている。
もしかしたら,我々の心の奥深くとは,量子空間のことかもしれません。量子空間には,全ての情報が記録されているのですから。
「素晴らしい人生であった」と,いつも言える覚悟が必要なのかもしれません。
以上が,田坂広志著『すべては導かれている』の紹介です。精神的な内容の本ですので,いろいろな考え方があるかもしれません。この本の内容を自分の生き方の問題として捉えるならば,「大いなる人生の道しるべ」となるかもしれません。
最後まで読んでいただき,ありがとうございました。