渡辺正著『「気候変動・脱炭素」14のウソ』の紹介
「地球は温暖化している」とか「CO2を減らさないと気候変動が大きくなる」などが,20数年ほど前からテレビや新聞などで多く報じられるようになってきました。私は,「それって,本当なのかなあ?どうなんだろう」と,なんとなく疑問に思っていました。
そんなときに,この『「気候変動・脱炭素」14のウソ』という本を読んでみました。「やっぱり,そうか。脱炭素社会は実現しない!」と,確信しました。
しかし,私の場合はシンギュラリティの件があります。いろいろな意見をもとにして総合的に判断すると,シンギュラリティは起こりそうにないことが分かってきました。だがしかし,チャットGPTの出現でわからなくなってきました。
地球規模の壮大なことに関して,私は渡辺氏の考えをそう簡単に信じてはいけないのかもしれません。みなさんの意見を聞いてみたいです。今回も本文内容を9つの問題にしました。答えを見ないようにして,お考えください。最後に,私が一番なるほどと思った筆者の考えを載せておきます。
ここから,本文の内容になります。
地球表面の暖かさ
地球表面の暖かさは,ほぼ全部が太陽エネルギーの恵みです(ほんの一部は地熱のおかげ)。かりに大気がなかったら,平均温度は太陽と地球の距離が決め,計算の結果,氷点下18℃になってしまいます。
太陽から届く光は,いろいろなものに吸収されたあと赤外線に変わり,ぴったり同じ量のエネルギーが宇宙に戻っていきます。さもないと地球は暖まる一方なので。現実の地球をくるむ大気の中では,特別な分子が赤外線を吸ったあと,エネルギーの一部を地球表面に向けて放出する。するとその分だけ地球表面が暖まり,平均気温はプラス15℃に上がって,差し引き33℃ぶん分だけ暖かいのです。
さて現在,次の2点を柱とする話が世に広まっています。
-
①人間活動のせいで大気に増えるCO2が地球を暖め,いろいろな害をなす。
-
②だからCO2の排出を減らそう。
①と②は,本当なのでしょうか。これから検証していきたいと思います。
ここで問題です。
問題1.太陽のエネルギーと地球の大気によって,33℃分地球の気温は暖かくなります。それでは,CO2が原因で暖かくなるのは、いったい何℃くらいでしょうか?
予 想
- ア.33℃全部
- イ.半分の17℃くらい
- ウ.1〜2℃くらい
- エ.その他
33℃の全部がCO2おかげなのでしょうか?ちがいます。大気はCO2の数十倍の水蒸気H2Oを含み,分子1個が赤外線を吸う力はCO2とH2Oではほぼ同じだから,33℃のうち31~32℃までは水蒸気のおかげ。つまりCO2の効果は1~2℃分です。
ここで,問題です。
問題2. CO2は、地球上の大気中におよそ3兆トンあります。その中で人間の活動によって増える分は,年間何%くらいだと思いますか?
予 想
- ア.80%以上
- イ.50%くらい
- ウ.20%くらい
- エ.1%くらい
- オ.その他
図1
年間のCO2の排出量は,約330億トンです(これは事実です)。
大気中にはおよそ3兆トンのCO2があります。330億トンはその約1%だから,排出分がそのまま大気にたまるとしても,総量は約1%しか増えません。排出量が5~7%の増減をしても,総量(つまりは濃度)の変化は「1%のさらに5~7%」だから,図1の曲線を大きく変えたりしないのです。
1958年から2022年までにCO2が420ppm‐320ppm≒100ppm 増えています。なので,100ppm÷64年≒1.6ppm/年分だけ毎年増えていることになります。
かたやコロナ禍では,全世界の排出量がたったの1年で6%も減っています。(図2)むろん原因は経済活動の縮小(不景気)でした。つまりCO2排出を減らしたければ,最善の手は経済の縮小です。それが嫌なら,何もしない(CO2のことなど忘れる)のがベストなのです。正解は,エの1%くらいです。
図2
CO2の排出量 | 「追加分」濃度 | |
2012年 | 317億トン | 113ppm |
2013年 | 322億トン | 116ppm |
2014年 | 323億トン | 118ppm |
2015年 | 322億トン | 120ppm |
2016年 | 322億トン | 122ppm |
2017年 | 327億トン | 125ppm |
2018年 | 335億トン | 127ppm |
2019年 | 334億トン | 130ppm |
2020年 | 315億トン | 133ppm |
2021年 | 330億トン | 135ppm |
身近な植物はみな,4~5億年前に上陸した緑藻の一種が進化・分化し,2~3億年前に大繁栄した生物の子孫です。当時の大気は,現在の何倍も濃いCO2を含んでいました。以後ゆっくりと減ってきたため,いまの植物は,酸欠ならぬCO2欠に苦しんでいます。
だから温室栽培では増収のために油を燃やし,あるいはCO2のボンベを開けて,ハウス内部のCO2濃度を1000~1500ppm(外気の3~4倍)に高めるのです。
大気に増え続けるCO2は,むろん植物の生育を速めてきました。1970年代から続く衛星観測の結果を総合すると地球の緑は,開発が進むごく一部の地域を除き,過去30年で10%ほど増えています。
とりわけサハラ砂漠の南部(サヘル地域)は,緑化が急激に進行中です。温暖化(気候変動)が地球の緑を減らす……というのは,NHKが報じ,本に書いてあっても,とんでもないウソだと思ってください。
ここで,問題です。
問題3. 日頃食卓にのぼるもののうち植物の光合成に関係ないものは、2つしかありません。それは、何でしょう?選択肢なしで2つお考えください。
1.( )
2.( )
答えは、水と塩になります。逆に言えば,日頃食卓にのぼるもののうち植物の光合成に関係あるものがほとんどである,ということです。
食物連鎖の頂点に立つのはヒトにほかなりません。ということは、大都市の夜景も車も電車も飛行機も植物の恵みに依存していることになります。
ここで,問題です。
問題4. 筆者は、世界の平均気温は1979年からの30年間でおよそ何度上昇していると書いていると思いますか?
予 想
- ア. およそ 3℃
- イ. およそ 1℃
- ウ. およそ0.3℃
- エ. その他
正解は,ウ. およそ0.3℃です。
地球上には,最高気温が60℃を超す場所も,最低気温が氷点下90℃に迫る場所もあります。だから地球の全体で「気温そのものの変化」は数値化しようもありません。
そこで,ややこしい言い方になりますが,「年平均気温(や月平均気温)が,ある基準期間の平均値からいくら変わったか(これから変わりそうか)」に注目します。プラスマイナス向きも考えた変化の幅を気温の偏差と呼ぶため,うるさくいえば,世界全体でみた平均気温偏差の変化ですね。とはいえ,いちいちそう書くのは面倒だから,厳密でないのは承知しつつ,以下では世界の気温変化と書きましょう。ふつう気温偏差の「基準期間」は30年間です。
大気にCO2を増やす要因さえ,まだ完全にはわかっていない。じつは,世界の気温変化も,輪をかけてあやふやなのです。
地球全体の気温を計測することはかなり難しく,温度の補正などで,主観が入り込むこともある,と渡辺さんは書いています。
天気予報で表示される気温値は整数ですから,過去ほぼ30年のうち,天気予報の気温値は,ほとんど変わらなかったことになります。最高気温や最低気温が日ごと7~8℃変わるのはザラですし,わずか数日後の予報値さえ,ときには当日までに3℃や5℃も変わってしまう。5℃なら,「地球温暖化」の500年分(!)ですよ。
過去30年間の0.2~0.3℃上昇は,自然界の調和にプラス効果も与えたでしょう。とりわけ寒冷地の農業には恵となり,食料の増産を促したはずです。そうした面をNHKも新聞も,なぜかほとんど報じないのです。
ここで,問題です。
問題5. 東京都心山手線を含む100平方km、高さが500mの大空間を考えます。体積50立方kmです。電力と車の排熱で昼間の12時間(午前6時から午後6時)で、計算上およそ何℃気温が上昇すると思いますか?
予 想
- ア.およそ10℃
- イ.およそ 5℃
- ウ.およそ 2℃
- エ.およそ0.8℃
- オ. その他
正解は、ア.およそ10℃です。
空気の熱容量(比熱。温度を1℃上げるエネルギー)はわかっています。さほど面倒でもない計算をしてみた結果,先ほどの発生エネルギー(電力+クルマ排熱)は,いま考えている空間が含む空気の温度を10℃も上げるパワーがあるとわかるのです。そして,東京都心の特徴でしょうけれど,ほぼ半分(5℃)を電力が暖め,あと半分(5℃)はクルマ排熱が暖めます。
もちろんその10℃は,「発生エネルギーが一瞬で大空間のすみずみまで伝わる」という,現実にはありえない状況を考えた計算の結果です。熱はゆっくり伝わるし,ふつうは風があるためエリア外にも散らばっていく。また,屋内で出た熱が外気にたちまち伝わるはずもありません。とはいえ,電力消費もクルマ排熱もない「江戸時代までの東京エリア」に比べ,空気は2℃や3℃くらい余分に暖まってきたでしょう。
近ごろ台風が狂暴化し,水害も増えてきたと,報道されることが多くなったようなイメージがあります。渡辺氏は,台風は80~60年前のほうが強かったし,乱開発やインフラの老朽化が主因と思える水害も多い,と書いています。
ここで,問題です。
問題6. 近年珊瑚礁が死滅しているという報道がよくなされていましたが、本当はどうなのでしょうか?
予 想
- ア.死滅している。
- イ.一部は死滅している
- ウ.死滅していない
- エ.その他
正解は,ウ.死滅していない,です。
サンゴが生まれた中生代(2.5億年~6600万年前)のCO2濃度は,現在の2~3倍も高かったようです。また,2010年には,海底からCO2が噴き出る浅瀬でサンゴがすくすく育つ海域も見つかりました。オーストラリア海洋研究所の報告によれば,GBR海域のサンゴ生育面積は,1986年以降,2021年が最大だったとの由。なお,海水が酸性化してきた証拠はほとんどありません。
ここで,問題です。
問題7. 1980年代に国連により温暖化対策が提案されましたかが、それは何のためだったのでしょうか?渡辺氏はどのように考えていると思いますか。
予 想
- ア.環境をよくするため
- イ.国連の関係者と環境研究者が次の仕事にするため
- ウ.その他
正解を書く前に,渡辺氏が書いた少し長い文章にお付き合いください。
環境の世
①本気の時代
先進国はようやく1960年代の末に,「俺たちは環境を汚している。これじゃあダメだ」と悟ります。
日本は1970年11月の臨時国会(公害国会)で14本もの公害関係性法案を可決し,汚染の監視と対策を始めることになりました。時期的に重なる1972年には,国連も国連環境計画(UNEP)という組織(本部はケニアのナイロビ)を創設します。1970年代の初期から約15年後つまり1980年代の中期に,先進国の環境はずいぶんきれいになりました。
以後の30年以上,空気や水の汚染はほぼ無害レベルのまま推移しています。もちろん,汚染の監視と対策を,関係者が地道に続けてくださるおかげです。子どもに環境を語るなら,あやしい温暖化などではなく,およそ1970年から85年まで15年間の苦労と成果こそ教えるべきです。
②仕事づくりの時代
関係者の地味な努力が環境をきれいにした結果,ひとつ困ったことが起こります。あちこちの官庁や企業が環境関連の部署(と担当者)をつくり,大学や国の研究所にも,環境を研究する人が増殖しました。そういう人々の仕事がなくなりかけたのです。
環境関係者も次の仕事がほしい。そんなわけで1985年ごろから研究者は,地球温暖化,オゾン層破壊,リサイクル,環境ホルモン,ダイオキシン,残留農薬,BSE(牛海綿状脳症),遺伝子組み換え食品……と,新しい研究テーマを見つけてきました。うち4つだけ振り返ります。
環境ホルモンは,無理やり「ひねり出した」中身ゼロの話でした。現在,大学生の大半は「環境ホルモン」など知りません。ダイオキシン騒ぎでは,心配な数値が出たという話は聞きません。非科学のきわみともいえるBSE騒ぎで,日本だけが「前頭検査」に巨費を投じました。リサイクルと称して約30年前から国民に分別を強いるペットボトルなどプラスチックの大半は,一般ごみと一緒に燃やされてきました(本物のリサイクルには,大量の化石資源を消費するから)。要するに1985年ごろから現在までの環境分野は,「火のないところに煙を立てる」ような時代です。仕事づくりを仕事にする時代ともいえましょうか。
1988年の6月23日,アメリカの連邦議会上院の公聴会でNASAの研究者ジェームズ・ハンセンが,「人間活動の出すCO2が地球を暖めているのは99%確実。このままいけば近い将来,地球は破局を迎えてしまう」という趣旨の証言をしました。
おもな根拠は,同年に自身が論文発表していた気候シミュレーションの結果です。1970年あたりのゼロ点からぐんぐん上がり,50年後の2020年には,世界の気温上昇が1.5℃を超す勢いのグラフでした。以後の実測値は,信頼度の高いデータは0.3~0.5℃だから,とんでもない「根拠」だったといえます。けれど「今後50年で1.5℃」のパンチは強く,それが世界を迷走させることになりました。
環境研究者のひとり(故人)が,ハンセン発言のころ公害研究所(現・国立環境研究所)の幹部でした。その先生が1990年代前半のいつか,少人数でやった会食の際,真剣なお顔でこう述懐されたのをよく覚えています。
「渡辺君……あれはほんとうにうれしかったよ。業務が先細りだったところ,ものすごい仕事ができたからねえ」
それはそうでしょう。いま環境省・文科省のような省庁と自治体を含むさまざまな役所が配る「温暖化研究費」は,少なくみても年に数千億円レベルです。2022年は空疎な「脱炭素」や「カーボンニュートラル」にからむ研究費の公募も増えて,いよいよ活況を呈しているようです。
正解は,イ.国連の関係者と環境研究者が次の仕事にするため,です。
ここで,問題です。
問題7. 再生可能エネルギーなどの推進は、脱炭素になるのでしょうか。渡辺氏は,どう考えているでしょうか。
予 想
- ア.脱炭素になる
- イ.脱炭素にならない
- ウ.その他の考え
正解は,イ.脱炭素にならない,です。
太陽光発電なら,春夏の好天の日中だけは「定格」に近い発電をします。それが「売電」を通じて送電網に入ると使いきれず,需給のバランスが崩れて大規模停電の恐れが生じる。だから2022年4月には,四国電力と東北電力が,受け入れの一時停止を決めました。
自治体レベルの電力に応じる蓄電設備ができれば問題も解消するけど,残念ながら,近い将来にそうなるメドはついていません。太陽光発電も風力発電も,国のCO2排出量をほとんど減らしません。(政府の望む?)産業の活性化だけには役立つとしても。
ここで,問題です。
問題8. 車のEV化(電気自動車)が日本で進むとどうなると渡辺氏は考えているでしょうか?
予 想
- ア.二酸化炭素の排出量が減る
- イ.日本で電気が足りなくなる
- ウ.車に関する高度な技術が廃れる
- エ.その他
正解は,イ.ウ.が正解です。
EV(電気自動車)は,車体そのものも,価格面でも,ほぼバッテリー(蓄電池)とみてよい製品です。そのバッテリーは,膨大なエネルギーを使って(むろんCO2を出して)作ります。
都心の100平方km圏内では,消費エネルギーの大きさが,電力もクルマもほぼ同じでした。すると,クルマの2割や3割がEVになった瞬間,電力が足りないことになります。EVを推進したいなら,火力発電所の増設や原発の再稼働をセットにして語るのが筋なのに,そういう声はあまり聞いたことがありません。
日本のクルマ産業は,血のにじむような努力の結果,高性能エンジンを含め,優秀なクルマを続々と出してきました。EV化がどんどん進めば,エンジンがらみで蓄積した高度な技術がすたれるばかりか,関連分野も合わせればほぼ550万人にものぼる就労者の一部は,転職や配置転換を余儀なくされてしまいます。クルマ用の素材をつくる化学産業も,ガソリン車がらみの部門は大きな打撃を受けるはずです。
突然ですが,脱炭素社会に向けて,実際に使われる日本の国の予算はいくらぐらいかご存知でしょうか?
ここで,問題です。
問題9.日本の予算は,2005年から使われている脱炭素社会に向けての予算は,年間いくらくらいだと思いますか。
予 想
- ア.300億~500億円
- イ.3000億~5000億円
- ウ.3兆~5兆円
- エ.30兆~50兆円
- オ.その他
正解は,ウ. 3兆~5兆円です。(国民ひとり3~4万円です)
この調子なら2030年まで使い続けるでしょう。総額は100兆円を超すでしょう,出所は電気代の上乗せ分と税金だから,だれもが気づかないままもう50万円以上を奪われ,今後も40万円ほど奪われる。合計100万円近くも・・・という現実をご承知でしたか?3人家族のお宅なら,ほぼ250万円です。その巨費は何をするのか?温暖化を防ぎ,化石資源の消費を減らす――が能書きでした。しかしどちらも,いままで完璧な空振りだったし,これからも成功の目はありません。
※※※※※※※※※※※※※※※
渡辺氏は,今の世の中の「カーボンニュートラル」や「脱炭素社会」に向けての取り組みがばかばかしいものであるということを,科学的根拠をもとにして我々に示してくれています。政治家や産業界の人々,報道関係者は,実のところ本当のことを理解しているのかもしれません。全ては,お金のために世の中が動いているのでしょうか。この本は,日本のいや世界の全ての人に読んでほしいと強く思いました。
最後に,私がなるほどと思った筆者の考えの1つを載せて,このレポートを閉じたいと思います。
「人間の経済活動で排出されるCO2を人間が削減しようとしても,大気中におよそ3兆トンもあるCO2全体の0.05~0.07%の削減率にしかならない。しかも,植物にとってはCO2濃度が高いほうが良く生育する」
みなささんもぜひこの本を読んでみてください。私は,この本を強くお勧めします。
最後まで読んでいただき,ありがとうございました。
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