ヒロじい教えて!老いと寿命
今日は、らんちゃん、じゅん君、りんちゃん,みうちゃん、みなと君,みんな集まったね。
せっかく5人全員が集まっているので、人生の大事なお話をするよ。
どんなお話?じいじのお話は,面白いから僕は好きだよ。
ぼくも大好きさ。
今日のお話は、老いと寿命についてだよ。
えー、難しそう。
哲学的だからね。難しいよ。みなと君が5人の中で一番小さいからみなと君にもわかるようにお話するよ。
ウン
じゃあ、始めるよ。いいかい、どんな人でも必ず老いる。老いるとは、歳をとるということだよ。私が子どものころ、おじいさんやおばあさんは,はじめからおじいさんやおばあさんだと勘違いをしていた。おじいさんやおばあさんも勿論、子どものころや若いころもあったんだ。人の一生は短い。自分の子ども時代は、なかなか時間がたたなかったような気がする。ところが、職業に就いたころから時間がすさまじい勢いで過ぎていった。毎日が仕事に追われていた。結婚して子どもができて、子どもを大きくして独り立ちさせて、ほっとするともう60歳だったよ。
そうだったわね。
就職して自分の子どもを大きくするまでの時間、約40年間は怒濤のように過ぎていった。高齢者の方々の様子を見てみると、60歳から70歳くらいまでは身体が動くので大丈夫だが、70歳を超えるころから身体の不調が出てくる。80歳になると身体の動きの衰えが目にみえるようになる。80歳を超えると身体の動きにかなりの制約ができてしまう。自分の身体が自分の意志で思うように動かせなくなるのはとてもつらいことだと思う。だが仕方がない自分の身体の現状を受け入れなければいけない。旅立ちのための助走を始めるということだろうか。
私もじいじは、前からじいじだと思ってた。じいじも小さいころがあったの?
もちろんさ、小学生の時も中学生のときもあったよ。小さい頃は小さい頃で楽しかったなあ。友だちとメンコしたりビー玉で遊んだり、ドッジボールもよくしたなあ。中学のときは剣道部に入ってたよ。あの頃は,女の子にもてたなあ。
本当?
本当だよ。今は面影ないけどね。
そうだね。
おい、おい。
あのね、老いは全ての人に訪れる。らんちゃんもじゅん君もりんちゃんもみうちゃんもみなと君もおばあちゃん、おじいちゃんになるってことだよ。
このスピードの早いこと。<光陰矢のごとし>っていうことわざがあるけど本当だよ。だから今を大事にしないといけないよ。生きられるのは今だけなんだ。未来はわからない。過去にも生きられない。そう考えると今を精一杯生きることがどれだけ大事かわかるようになるよ。
大事なのでもう一度言うよ。今を大切に生きる。これしかない。
この世に生まれてきたのは、奇跡なんだよ。みうちゃんなんか産まれるまでに27時間くらいかかったんだから。ママとパパは大変だったんだよ。じいじもみうちゃんが産まれてくるかとっても心配したんだ。もちろん、らんちゃんとじゅん君,りんちゃん,みなと君も無事産まれてきてくれて本当にうれしかったよ。
みんな赤ちゃんだったけど、パパやママに大事に育てられて大きくなったでしょ。パパやママだって昔は赤ちゃんだった。らんちゃんのパパやみうちゃんのママは,じいじとばあばが大切に育てた。らんちゃんのママやみうちゃんのパパは、それぞれのおとうさんとおかあさんが大切に育てたのさ。じいじとばあばは、それぞれのパパとママに大事に育てられた。
順番なんだ。人は順番に生きてゆくのさ。歳をとるのも順番さ、歳をとると寿命ということを良く考えるようになる。
とても残念なことだが、人には寿命がある。私は50歳になったときに自分の死というものを自覚した。それまでは、自分の死について意識して来なかった。自分にはあまり関係ないと考えていた。自分の青春を謳歌していた。
ところが50歳を過ぎるころから、世間によくある「死」というものが自分自身に対して突然大きくクローズアップしてきた。『自分もいつかは死んでしまうんだ』という恐怖というか、寂しさというか、いつの日かわからないが、自分がこの世からいなくなってしまうという現実が理解できるようになってきた。
そうなんだ。
私が知っている人で今までになくなった方も多い。その人が3歳のときロタウイルス感染で亡くなった。8歳のとき、日本脳炎になって亡くなった。9歳のとき、白血病で亡くなった。11歳のとき、心臓病で亡くなった。12歳のとき、溺れて亡くなった。大人になってから、自殺した人、脳梗塞、癌で亡くなった人もいる。
人間は、いつ死んでしまうかを知ることはできない。よく大病を患った人の生き方が劇的に変わることを聞くことがある。自分が生きているという考え方が、生かされているという考え方に変わる。いただいた命を大事にしないといけないと考えるようになる。人や社会のために生きていくことを決意する場合もある。いつ死ぬかわからないからこそ、その時その時を一生懸命に生きることが大切な気がする。今生きているこの世こそが極楽だと思うよ。自分が今生きていることの奇跡をかみしめながら、生きていきたいと強く思うようになった。
ちなみに、仏教でいうところの極楽・地獄は存在しないと私は考えている。死というのは、寝ている人が何もわからないように、意識のない世界、無の世界だと思う。人間が死んだ身体は焼かれて分子・原子に戻るだけなんだ。その分子・原子が集まりまた違う物質をつくる。それは、花や虫、小動物かもしれないし水や鉄、土などの無生物かもしれない。
いいかい。人はいつか必ず死ぬ。怖いけど死ぬのは誰もが避けられない。でも,じいじは人のために生きていたい。そう思っている。
じいじ、何か悲しいね。みんな死んでしまうなんて、涙が出てくるわ。
死んでしまうから生きることがすばらしいんだよ。輝いているんだよ。死と生はカードの裏と表と同じで一対でひとつになっている。生があるから死がある。死があるから生があるんだ。
この世に生を受けたら、周りの全てのもの・ことに対して感謝の気持ちをもって生きていかなくてはいけないよ。生きていることが当たり前だと思ってはいけない。
いつか5人とも大事な人、好きな人ができると思う。その人と手を取り合って、精一杯生きるんだよ。それがじいじの願いだよ。
わかったよ。でも結婚するかはわからないよ。
結婚は縁だからね。みんなが,自分の寿命を大事に生きてほしいだけだよ。こんな大切な話ができて,今日はとってもうれしいよ。
よかったわね。