『ファクトフルネス』の紹介
まず、「ファクトフル(FACTFULL)」というのは、「事実に満ちている」という意味で、「ネス(NESS)」は「〇〇な状態・〇〇な性質」を表します。この二つの言葉を合わせて、「事実に溢れた状態」から転じて、「データという事実に基づいて世界を見る」という意味の、「ファクトフルネス」という言葉が誕生したと言われています。
いきなりですが、2017年を現在と仮定して、次の質問に答えてください。答え合わせは後でします。あなたは、今の世界の状態がわかるでしょうか。あなたの予想はどのくらい正解するでしょうか。それでは、5分間ほど時間をとります。
質問1
現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A20% B40% C60%
質問2
世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
A低所得国 B中所得国 C高所得国
質問3
世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
A約2倍になった Bあまり変わっていない C半分になった
質問4
世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?
A50歳 B60歳 C70歳
質問5
15歳未満の子供は、現在世界に約20億人います。国連の予測によると、2100年に子供の数は約何人になるでしょう?
A40億人 B30億人 C20億人
質問6
国連の予測によると、2100年には今より人口が40億人増えるとされています。人口が増える最も大きな理由はなんでしょう?
- A子供(15歳未満)が増えるから
- B大人(15歳から74歳)が増えるから
- C後期高齢者(75歳以上)が増えるから
質問7
自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変化したでしょう?
A 2倍以上になった Bあまり変わっていない C半分以下になった
質問8
現在、世界には約70億人の人がいます。下の地図では人の印がそれぞれ10億人を表しています。世界の人口分布を正しく表しているのは3つのうちどれでしょう?
質問9
世界中の1歳児の中で、何らかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
A20% B50% C80%
質問10
世界中の30歳男性は、平均10年間の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう?
A9年 B6年 C3年
質問11
1996年には、トラとジャイアントパンダとクロサイはいずれも絶滅危惧種として指定されていました。この3つのうち、当時よりも絶滅の危機に瀕している動物はいくつでしょう?
A2つ B1つ Cゼロ
質問12
いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?
A20% B50% C80%
質問13
グローバルな気候の専門家は、これからの100年で、地球の平均気温はどうなると考えているでしょう?
A暖かくなる B変わらない C寒くなる
答え合わせをしてみましょう。
正解は,1C,2B,3C,4C,5C,6B,7C,8A,9C,10A,11C,12C,13A,になります。
この質問に答えた相当な学歴のある人や世界中で活躍している人の結果でも、相当悪いそうです。なぜそうなるのか、筆者は10に分けて解説をしています。これからは、筆者の書いたものを抜粋していきます。
①世界は分断されているという思い込み
乳幼児死亡率は、社会全体の体温を計ってくれる巨大な体温計みたいなものだ。
ここで質問です。
乳幼児死亡率がなぜ巨大な体温計みたいなのでしょうか。考えてみてください。
子どもはか弱い。だから、命を落とす原因なんていくらでもある。マレーシアで、1000人の子どものうち14人だけ死ぬということは、残りの986人は生き延びるということ。その子たちの親、そして社会が、病原菌、飢餓、暴力などから、子どもたちの命を守ったからだ。この14という数字を見るだけでも、マレーシアのほとんどの家庭には十分な食料があり、水道水に下水が混ざることもなく、誰もが基本的な医療を受けることができ、母親も読み書きができることがわかる。乳幼児死亡率からは、子どもの健康状態だけでなく、社会全体の健康状態もわかるんだ。
乳幼児死亡率が上がった国はない。世界は基本的に良くなっているからです。
世界を4つの所得レベルに分ける
- レベル1 1日1ドル 世界で10億人
- レベル2 1日4ドル 世界で30億人
- レベル3 1日16ドル 世界で20億人
- レベル4 1日32ドル 世界で10億人
分断本能
人はドラマチックな本能のせいで、何事も2つのグループに分けて考えたがるからだろう。いわゆる「二項対立」を求めるのだ。良いか悪いか、正義か悪か、自国か他国か。ジャーナリストは人間の分断本能に訴えたがる。だから話を組み立てる際、対立する2人、2つの考え方、2つのグループを強調する。「世界には極度の貧困層もいれば、億万長者もいる」という話は伝わりやすく、「世界の大半は、少しずつだが良い暮らしをし始めている」という話は伝わりにくい。正義と悪との闘いは、大ヒット映画でお決まりの構図だ。実際には分断がないのに人には分断があると思い込んだり、違いがないのに違いがあると思い込んだり、対立がないのに対立があると思い込んでしまう。
平均の比較で騙されてはいけない。本書では、実例をあげてみます。アメリカの男子と女子の数学の点数の違い、とアメリカ人とメキシコの人の年収の比較です。どれも平均に気を付けるように言っています。平均ではなくて分布図にすると筆者が言いたいことがすっきりします。
②世界はどんどん悪くなっているという思い込み
世界は良くなっているとした有鉛ガソリン、HIV感染などの32分野の例をあげています。アメリカにおける犯罪の認知件数は減り続けている。悪いニュースは広まりやすい。
③世界の人口はひたすら増え続けるという思い込み
これから先、子どもの人口は増えません。増えるのは大人の数だけです。2075年くらいに110億人くらいで一定になるだろうと予測されています。全てのグラフは直線にはならない。所得が増えると女性一人あたりの子どもの数は減少する。虫歯、交通事故による死者数、子どもの溺死のグラフはコブの形になる。
④危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
恐怖と危険は違う。リスクは、危険度×頻度で決まる。恐ろしさはリスクとは関係ない。
⑤目の前の数字がいちばん重要だという思い込み
過大視本能を抑えるには、比較したり、割り算(割合を出す)をしたりするとよい。80:20のルールを使う。
⑥ひとつの例がすべてに当てはまるという思い込み
レベル4の暮らしをしている人は、どこの国でも地域でもだいたい似ている。過半数は51%から99%まである。
⑦すべてはあらかじめ決まっているという思い込み
文化も宗教も変化する。ゆっくりした変化でも変わっている。
⑧世界は一つの切り口で理解できるという思い込み
専門分野以外のことは案外知らない。数字は大切だが、数字だけに頼ってはいけない。単純なものの見方と単純な答えには警戒しよう。
⑨誰かを責めれば物事は解決するという思い込み
世の中は、誰か一人の考えを改めさせると良くなるという単純なものではありません。人類の成功はたいてい力のある偉大なリーダーのおかげとされ、普通の人たちはその陰に隠れてしまう。世界の発展に貢献してきた名もなきヒーローを讃えて、パレードをしよう。
犯人ではなく原因を探そう。社会を機能させている仕組みに目をむけよう。
⑩いますぐ手を打たないと大変なことになるという思い込み
時間はほとんど関係ありません。2,3日後でも半月後でも数年後でも、いつでもOKです。焦らなくても大丈夫。データにこだわろう。未来についての予測は不確かである。石油が無くなると言われるが、無くなる気配がぜんぜんしません。
※
詳しいことは本書に譲りますが、人間の思い込みは重大な悪い結果をもたらす可能性があるので、落ち着いて対処しなくてはうけないと筆者は言っています。
世界は確実に良くなっています。それは、数字により確かなことです。ニュースは人々が不安に思うことやショッキングなことしか流しません。徐々によくなっている世界の情勢など誰も関心がないからです。いろんな情報を鵜呑みにしないで自分で考えなくてはいけません。どんなことにも予想をたてて実験結果をみることによって正しい情報が得られるのではないでしょうか。
この本から学んだことは数多くありますが、各国の文化が変化することに驚きました。世界をレベル1~レベル4で見ると本当の世界の姿が理解できることがわかりました。何か問題を解決する場合は大事な数字を見る必要があるなど、ときどきこの本は読みなおす必要があると感じました。ついでにこのハンス・ロスリング氏はTEDトークにも出演されています。一度検索して、聞いてみてください。TEDでの評価も高いそうです。
寿命と所得の関係の世界の実態(2011年)を載せておきます。これを見ると韓国と日本はほとんど同じような国になっています。韓国が日本に強気なのもわかる気がします。(縦軸が平均寿命,,横軸が一人当たりのGDPです)
右上を大きくした図です。
最後に人口に関して意識することは、アフリカは10億人から30億人になり、アジアは40億人から50億人になります。欧米の人口は変化がありません。これから世界の経済をけん引するのはアフリカとアジアになります。日本は何とか中国を除くアジアと発展していくであろうアフリカに何かを供給することができれば、もう一度経済発展できそうです。何を供給するのかは、よーく考えなくてはいけません。
最後まで読んでいただき,ありがとうございました。