矢部宏治著『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』の紹介
私が学生の頃は,自分が生まれ育った<日本社会の構造>や<経済の仕組み>,それから教師になってからは,<教育>や<科学と哲学>などに興味を持ってきました。
それは,研究するといった大それたことではなく,ただ単に気に入った本を読むだけのことだったのですが,かなりのことが分かってきたと思います。
私の今までの人生は,とても幸せだなあと実感しています。幸せのひとつは,板倉さんに出会ったことです。このことは自分の人生にとって,とても大きかったと思います。自分の生活が仮説を中心として回るようになったくらいです。
科学と哲学的な考え方(板倉式発想法)に出合えて,自分の人生を生きることが楽しくなりました。仮説の全国研究大会には家族で出かけて楽しみました。今でも仮説サークルの例会にレポートを書いたり,メンバーの考えを聞いたりして,たくさんの刺激を受けています。
さて,私が興味を持っていた<社会の構造>に関して,いい意味でとんでもない本を見つけました。
表題にある矢部宏治さんが書いた『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』という本です。「沖縄では,米軍基地や軍人との関係でよく揉めているなあ」という印象を私はもっていましたが,それ以上の考えはありませんでした。「日米同盟があるから仕方ないのかなあ」という認識しかありませんでした,この本を読むまでは。
ここからが本題です。実は,この本の要約を書こうと考えたのですがどの章を読んでも大事な文章ばかりで困ってしまいました。今の自分の能力では残念ながらまとめられません。
そこで,亡くなられた翁長雄志元沖縄県知事の言葉を引用します。彼は,日米の関係を的確に短い言葉で表現しています。
「憲法の上に日米地位協定がある」とはどんな意味でしょうか。
実は,1959年の「砂川裁判・最高裁判決」によって「安保条約のような重大で高度な政治性を持つ問題については,最高裁は憲法判断をしなくていい」というとんでもない判決が出ているのです。この判決により,「安保条約は日本国憲法の上位にある」ことが,最高裁の判例として,事実上,確定してしまったわけです。
「国会の上に日米合同委員会がある」とはどんな意味でしょうか。
実は「日米合同委員会の議事録や合意文書は,原則として公表しない」(第1回日米合同委員会での秘密合意 1960年6月)/「日米合同委員会で決定した日米合意は,日本での国会での承認を必要としない」(安保改定交渉のなかでの秘密合意 1959年4月)とあるのです。すべて密約ですが,それが今,公に出てきているのです。
つまり米軍は,日本の国内で,日本政府の了解を得ることなく,いつでもどこでも軍事訓練を行うことができます。米軍は,アメリカ本土では住宅地で軍事訓練ができません。アメリカの国内法があるからです。しかし,日本ではやりたい放題です。飛行機の高度も関係ありません。
アメリカ本土では,コウモリなどの野生生物や砂漠の中にある歴史上の遺跡でも,それらに悪影響があると判断されたときには,もう訓練はできません。計画そのものが中止になります。アメリカの国内法があるからです。
日本なら関係ありません。日本でなら,いつでもどこでも訓練ができるのです。いえ,訓練だけではありません。日本の自衛隊と一緒に(自衛隊を指揮して)戦争をすることもできるのです。日本人の人権は,米軍には関係ないのです。なぜなら,日本では憲法が機能していないからです。ただし,矢部さんが書かれたことが真実であるならばですが・・・。
この本を読むと米軍と日本の関係は,戦争で負けてから実に巧妙な法的な罠があったことがわかります。日米合同委員会によって日本の未来は米軍によって決めることができるのです。
私は,信じられませんでした。元安部首相の祖父である当時の岸首相と藤山愛一郎外務大臣が,ダグラス・マッカーサー駐日大使との間で密約を結んだということです。よく言えば,この2人は,日本のことをよく考えて「防衛をアメリカにまかせて,経済を選んだ」のかもしれません。だから,日本は防衛にお金をかけずに経済的に発展したのかもしれません。しかし,日本国としての誇りがないものにした罪は大きいと思います。
これから日本の未来はどうなるのでしょうか。
未来のことは誰にもわからないのですが,いくつかの選択肢が挙げられると私は思います。
①現状のまま何も変わらず,アメリカのいいなりになり続ける。
- アメリカは日本の領土をアメリカ軍の基地として使い続けるでしょう。私たち命令される側の弱い者にとっては,関係ないのかもしれません。しかし,中国とアメリカが戦争でも起こした場合は,日本は大変なことになると想像できます。
②中国やロシアなどの大国と日本が対峙するうちに,今の日本国の現状が徐々に明らかになり日本人として日本国をどうするのか考え,国民が政府にたいして政府の方針の変更を求めるようになるかもしれません。
- こうなれば国内は,どうすればよいのか歴史に向き合いながら一番よい道を探るようになるかもしれません。しかし,国防や憲法についてのいろいろな考えがあり,国内は騒然となるかもしれません。
①②の予想は,全て外れるかもしれません。どうなるのかは,日本国民の考え方にゆだねられることになるでしょう。もしかしたら特別優秀な政治家が出てきて,あっと驚く政策でこの難局を乗り切るかもしれません。
大事なことは,日本国民一人ひとりが情報を正しく知り,自分で判断することだと思います。その考え方の総和が日本国をつくるのです。(かなり難しいことだと思いますが・・・)
もう一つの選択肢もあります。①とよく似ているのですが,
③自分の生活だけを考えて,楽しく暮らす。という選択肢もあります。
- 基地近くに住んでいて,実際に迷惑を受けている方々をどうすればいいのか,私にはわからないのですが,「国同士の大局は知ったことではない」と日米関係を無視して生きることが精神上よいのかもしれません。ただし,いつかは命令する側によって私たちは何かを命令されるかもしれません。その時は,覚悟しなくてはいけません。
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私のレポートよりこの本を買ったり借りたりして直接読むほうが,当たり前ですが,ずっとよくわかります。読む時間がないという方は,下に書いたホームページから,この本のダイジェスト版を読むことができます。一度読まれることを強くお勧めします。