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有馬哲夫著『原爆 私たちは何も知らなかった』(新潮新書2018.9.20発行)の紹介

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サークルレポート

有馬哲夫著『原爆 私たちは何も知らなかった』(新潮新書2018.9.20発行)の紹介

Hiro
Hiro

私は,衝撃的な本に出合いました。今まで日本人が知らなかった,いや知らされなかった「原爆」についての本です。

Hiro
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私はこの本を読んで,私は有馬さんが原爆についてこれだけの内容があることを調べることができたことに頭が下がります。あなたは,有馬さんが書いた本書にある3つの章,Ⅰ原爆は誰がなぜ作ったのか,Ⅱ原爆は誰がなぜ使用したのか,Ⅲ原爆は誰がなぜ拡散させてしまったのか,を一度読んでみてください。今まで日本人に知らせてもらえなかった内容が証拠の公文書とともに書いてあります。それは,おそらく日本人全員が知らないような驚きの内容です。

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あなたが日本人であるなら,知っておくべき内容だと私は確信しています。ぜひこの本を手に取って読まれることを,私は強くお勧めします。

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ただし,この本に書かれていることは,先ず仮説(仮の説)としてあなたに受け止めていただきたいと思います。真実は,時が証明してくれると考えます。

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ここで,本書の著者である有馬哲夫さんについて,簡単に紹介しておきます。

【有馬哲夫(ありま てつお)1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『原発・正力・CIA 機密文書で読む昭和裏面史』『こうして歴史問題は捏造される』など。】
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このブログを読みはじめると,文字が多くて途中で嫌になるかもしれません。嫌になるかもしれませんが,飛ばし読みでもいいので一度,最後まで読んでください。お願いします。多くの日本人の方々に原爆のことについて,本当のことを知っていただきたいのです。

Hiro
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このブログの本文中で特に注釈が無い場合は,全て有馬さんが書かれた本の内容になります。私の意見や考えではないことを申し添えておきます。

Hiro
Hiro

はじめに,有馬さんが書いた本書の「まえがき」から長くなりますが,一部分を抜き書きさせてください。

(以下,本書「まえがき」の内容の一部です)

私がもっとも心を痛めるのは,広島の原爆死没者慰霊碑に「安らかに眠って下さい過ちは繰り返しませぬから」と刻まれていることです。素直に読むと「日本は誤った戦争を仕掛けた結果,原爆を落とされました。二度とこのような過ちは犯しませんから,やすらかに眠ってください」という意味にとれます。つまり,日本は戦争を仕掛けたので罰として原爆を投下されましたが,もう戦争はしませんからこれからは原爆の被害に遭うことはないでしょう,ですから安らかに眠ってくださいということです。多くの日本人はそう理解するのではないでしょうか。
広島市はこの碑文の意味を「原子爆弾の犠牲者は,単に一国一民族の犠牲者ではなく,人類全体の平和のいしずえとなって祀られており,その原爆の犠牲者に対して反核の平和を誓うのは,全世界の人々でなくてはならないというものです」と説明しています。私は何度も読み返しましたが,そのように理解することはできませんでしたし,今もできません。つまり,日本は間違った戦争を仕掛けたのだから罰として原爆が使われたのだということです。これはアメリカ側の論理ではないでしょうか。これだと,広島・長崎の被爆者は,罰せられたということになってしまいます。何の罪も犯していないのにこんな自虐的な受け止め方をしていいのでしょうか。(私(ヒロじい)も,全くその通りだと思います)
(略)
そもそも私たちが持っている原爆についての認識は,最初から,根本的な部分で間違っていたのではないでしょうか。つまり,百歩譲って間違った戦争を仕掛けたとして,そのことと原爆を投下されたことは関係がないのではないかということです。原爆は戦争を終わらせるために使われたものでさえないかもしれません。
(略)
私たちは,これまで占領中にアメリカ軍によって植え付けられてきた自虐的歴史観のせいで,アメリカ側の原爆プロパガンダを信じ,きわめて根源的な問いを発することをしてきませんでした。この歴史観から脱するためには,これまで歴史的事実と思われてきたことを疑い,問うことがなかった問いを発し,それに対する答えを得る必要があります。アメリカ第二公文書館,イギリス国立公文書館,カナダ国立図書・公文書館に所蔵されている数万点におよぶ膨大な公文書をもとに,以下でそのような試みをしていこうと思います。
Hiro
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私(ヒロじい)は,この<まえがき>を読んで,「もしかしたら,有馬さんが書いた通りかもしれない」と思いました。私たちは,日本人なのにアメリカ人の考え方を植え付けられたのかもしれません。そして,有馬さんの『これまで歴史的事実と思われてきたことを疑い,問うことがなかった問いを発し,それに対する答えを得る必要があります』という力強い言葉によって,原爆についての新しい歴史の見方を学べると思い,心が震えました。

Hiro
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さあ,これからあなたと一緒に,有馬さんが調べ尽くした公文書によってアメリカ側のプロパガンダを丸裸にして,新しい歴史の見方を学んでいくことにしましょう。

Hiro
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いつものように私が設定した問題を解いていく形で,有馬さんの新しい歴史の見方を学んでいきます。この本に書かれている公文書による証拠や詳しい説明などをお伝えできればいいのですが,大まかな概略だけを伝えることにします。詳しい内容を知りたい方は,ぜひこの本を手にとって時間をかけて読んでいただきたいと思います。

Hiro
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それでは早速,このレポートの一番の肝になる問題です。

問題1.原爆製造に関わった国はどこの国だと,あなたは思われますか。次の選択肢から1つ選んでください。
予 想
ア.アメリカ単独
イ.アメリカとイギリスの2か国
ウ.アメリカ,イギリス,カナダの3か国
エ.アメリカ,イギリス,カナダ,フランスの4か国
オ.その他

Hiro
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正解は,ウ.アメリカ,イギリス,カナダの3か国です。有馬さんは,膨大な公文書からこの3か国を特定します。

カナダは,なぜ入っているのでしょうか。それは,原爆の原料であるウランと関係があります。カナダはウラン鉱の輸出国でした。当時,コンゴにはもっと質が良く埋蔵量も豊富な鉱山があるのですが,なにせイギリスからもアメリカからも遠く,また宗主国のベルギーがドイツに占領されているということで,混乱状態にあり,なかなか入手が難しかったのです。
Hiro
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(ヒロじい)私は,アメリカが単独で原爆を作り,使用したとばかり思っていました。大多数の日本人はそう思っているのではないでしょうか。

Hiro
Hiro

それでは,徐々にこの3ヵ国を含めた原爆に関する詳しい内容を考えていくことにしましょう。

Hiro
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いきなり大きな<問い>になりますが,「Ⅰ原爆は誰がなぜ作ったのでしょうか」という問いについて,見ていくことにしましょう。

Hiro
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ここで問題です。

問題2.ウランの核分裂エネルギーを爆弾に使うアイデアが最初に登場したのは,どこの国だったと,あなたは思いますか。下の選択肢から1つ選んでください。
予 想
ア.アメリカ
イ.イギリス
ウ.カナダ
エ.ドイツ
オ.フランス
カ.その他

Hiro
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正解は,イ.イギリス,です。

ウランの核分裂エネルギーを爆弾に使うアイデアが最初に登場したのは,イギリスだったのです。しかし,原爆の製造には,巨額の資金,巨大な工場施設備,膨大な量の資材と薬品,大量のウラン鉱石が必要なために当時のイギリスの状況を考えると,ほぼ不可能でした。
イギリスがまず原爆製造が可能であり,そのために何が必要かを明らかにしました。イギリスのチャーチルが原爆開発をカナダでやろうと考えます。これまで原爆といえばアメリカだけを見てイギリスに目を向けることはありませんでした。これは根本から改めなければなりません。また,日本で原爆についていわれてきたことも,アメリカからの視点に加えて,イギリスとカナダからの視点から根源的に見直されなければなりません。
ケベック協定によって,原爆の開発は,アメリカ,イギリス,カナダの3ヵ国が共同して行うことになりました。
ケベック協定※1とは、【イギリスとカナダとアメリカ合衆国の公文書で、イギリスとアメリカ合衆国間で核開発の情報の秘密化を決めた二国間協定である。この文章は1943年8月19日にカナダのケベック・シティーで催されたケベック会談において、ウィンストン・チャーチルとフランクリン・ルーズベルトにより調印された。】 ウィキペディアより
日本ではこの協定のことはまったくといっていいほど知られていませんが,極めて重要です。この協定のことを知らなければ,原爆開発について何が話し合われ,何が決められたかを知ることができません。
Hiro
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(ヒロじい:「この文章を読む限り,日本人には原爆について何も知らされていないと言える」と,私は思います)

ドイツの1939年のポーランド侵攻のあと,イギリスはドイツに宣戦布告し,戦争状態に入りました。これはアメリカが日本およびドイツ・イタリアと戦争に入る2年前です。したがって,イギリスこそまさしく「ドイツに先を越されないようにする」必要があったのです。ドイツもまた原子力エネルギーを開発していたのですが,彼らは「ウラン・エンジン」を開発して動力または発電に使おうとしていました。爆弾として使うことは考えていなかったのです。
それでは,誰が作ったかについて考えていきましょう。このウラン・エネルギーの使い方を考え付いたのは,オットー・フリッシュとドルフ・バイエルスです。彼らはドイツ系のイギリス人です。ドイツとオーストリアからイギリスに亡命したのです。そして,彼らは次のように考えました。
「ドイツがこの兵器(原爆)を持っている,あるいは将来持つと仮定すると,これから身を護れる大規模で効果的なシェルターはないことに気が付く。もっとも効果的な方法は同じような爆弾で脅威を与えることだ。攻撃の手段として使用するつもりはないとしても,できるだけ早くこの爆弾も製造を始めることが大切だ」
原爆に関わったその他の科学者もイタリア人,ユダヤ人,ドイツ人,フランス人,イギリス人,アメリカ人,オーストリア人など生まれや国籍など複雑な人が多くいました。彼らの共通点は,ナチス・ドイツに迫害されたか,あるいは強い嫌悪感を持っていたということです。このことは原爆開発とは何だったのかを考える上で重要です。原爆開発は,関わった科学者たちの面から見れば,まさしく国際的プロジェクトだったということです。だからこそ,科学者たちは,自分たちが原爆を完成させたら,たちまち世界にそのノウハウが広まってしまい,文明の終わりがやってくるのではないかと恐れたのです。ただし,動機の上ではナチス・ドイツが原爆を持つことによって,ヨーロッパの支配を永続化させることがないようにという,地域的なものだったといえます。彼らは,アジアや日本のことにはあまり関心がなかったのです。
1941年3月頃,イギリスはモード委員会※2に原爆研究を命じます。モード委員会は,3つの結論を出しました。結論の内容を詳しく書きませんが,要は「原爆が作れる」という結論です。そして,最終的な結論(モード委員会報告書)を出して1941年7月15日に解散しました。
モード委員会※2とは,【MAUD委員会(モードいいんかい、MAUD Committee)は第二次世界大戦中のイギリスで原子爆弾の可能性を探るために設けられた科学者からなる委員会である。 1941年に委員会はウラン濃縮とそれによるウラン爆弾が技術的に可能だとする報告を提出し、これがアメリカ政府に伝えられて原爆開発計画の直接の開始要因となった。】ウキペディアより
1941年10月アメリカ人のコナントや科学研究開発局長官のブッシュなどは,モード報告書をもとにルーズベルト大統領に原爆開発を進言することになります。
1941年真珠湾攻撃後の12月16日,ルーズベルト大統領は非公式の口頭での指示で,最高方針決定委員会の設置を命じます。戦争に入る前は,核分裂の研究ではあっても平和的なものしか研究していなかったアメリカが,状況が切迫するころから,原爆に関心を持ち,開戦後に開発を始めました。
Hiro
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次に,「Ⅱ原爆は誰がなぜ使用したのか」という問いについてみていきましょう。

Hiro
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ここで,問題です。

問題3.日本に原爆を使用しようと最初にいいだしたのは誰でしょうか。あなたは誰だと思いますか。下の選択肢から1つ選んでください。
予 想
ア.イギリスのチャーチル
イ.アメリカのルーズベルト
ウ.アメリカのトルーマン
エ.その他

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正解は,ア.イギリスのチャーチルです。なぜチャーチルは日本に原爆を使用することを望んだのでしょうか。

1944年9月当時,連合国軍の爆撃によってドイツの工業力がほぼ壊滅状態にありました。よって,ドイツに対する原爆の「抑止論」も「対抗論」も根拠を失っていたのです。それなのに,なぜチャーチルは原爆を使用すべきだ,それも「原爆を持たざる」日本に対してそうすべきだといっているのでしょうか。
Hiro
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ここで問題です。

問題4.チャーチルは「日本に原爆を使用すべきだ」と,なぜ言っているのでしょうか。あなたは,どう思いますか。下の選択肢から選んでください。ただし,答えは1つとは限りません。
予 想
ア.日本に使用することによって,アメリカの原爆の開発の中断を避けたいから。
イ.ソ連の勢力拡大を抑えることができるから。
ウ.ケベック協定のもとで米英の協力体制が戦争のあとも続き,ソ連はそこから排除されるというイギリスが狙っている方向へ向かうから。
エ.その他

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正解は,ア,イ,ウ,の全てです。

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『ケベック協定のもと,自国(イギリス)では,原爆開発を行わず,アメリカの原爆開発に全面的に協力することで,戦後にその成果を共有することをチャーチルは,目論んでいたのです。チャーチルは「原爆開発を中断しないでくれ」,あるいは,「スピードダウンさせないでくれ」という代わりに「原爆を日本に対して使ってはどうか」といったと考えられるのです』と,有馬さんは書いています。

Hiro
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これが本当だと仮定すると,

日本人,特に広島や長崎の被爆者からすると,とんでもないことではないでしょうか。要するに,当時の軍事的・政治的必要性とはあまり関係なく,戦後アメリカとともに原爆・原子力ビジネスを展開したいという思惑から,チャーチルは日本への原爆使用を提案したことになるからです。
アメリカ側の考えはどうだったのでしょうか。1944年9月22日,つまりハイドパーク会談※3の4日後にルーズベルトと会ったブッシュ(最高方針決定委員会メンバー)は,次のように書いています。「大統領は実際にこの手段(原爆)を日本に使うのか,それとも,この国で実験をして脅威として使うのかという問題をとりあげた」
ハイドパーク会談※3とハイドパーク合意とは,【1944年9月にニューヨーク州ハイドパークで行われたアメリカの F.ルーズベルト大統領とイギリスの W.チャーチル首相の会談の結果,調印された原子力に関する米英協力の覚え書。原爆製造計画と原子力平和利用について完全に意見が一致し,「原爆が完成した際には,熟慮のうえ,おそらく日本人に対して使用し,その爆撃は降伏するまで繰返すと警告する」ことで合意した。】コトバンクより
確認ですが,原爆開発中のアメリカ大統領は,ルーズベルト大統領です。チャーチルは日本に対して原爆を使用することに前向きなのに対して,ルーズベルトはそれほどでもなかったことがわかっています。
ところが,1945年4月12日にルーズベルトは息を引き取ってしまいます。そして,スティムソンは何も知らないハリー・S・トルーマン新大統領に原爆のことを引き継がなければならなくなります。スティムソンとは,ルーズベルト大統領がマンハッタン計画を承認し,その実行を大統領から任せられていた人物です。
マンハッタン計画(Manhattan Project)とは、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツなどの一部枢軸国の原子爆弾開発に焦ったアメリカ、イギリス、カナダが原子爆弾開発・製造のために、科学者、技術者を総動員した計画です。
Hiro
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ここで問題です。

問題5.シティムソンは,トルーマン新大統領に原爆のことをどのように引き継いだのでしょうか。次の選択肢から1つ選んでください。
予 想
ア.原爆の実践での使用に前向きであった。
イ.原爆の実践での使用に前向きではなかった。
ウ.その他

Hiro
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正解は,ア.原爆の実践での使用に前向きであった,です。

ルーズベルト大統領は,チャーチルと違って原爆の使用に前向きというわけではなかったといわれています。それなのに,シティムソンはトルーマン新大統領に原爆の使用を前向きに伝えています。これはなぜなのでしょうか。
Hiro
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ここで問題です。

問題6.シティムソンはトルーマン新大統領に原爆の使用を前向きに伝えているのですが,これはどうしてでしょうか。次の選択肢から選んでください。正解は,1つとは限りません。
予 想
ア.原爆開発を始めた以上,完成させる,完成させたら使用するというのがシティムソンの役回りであり,義務を果たそうと考えていたから。
イ.原爆開発に(1945年6月時点で)約20億ドルに達していたこのプロジェクトを途中で止めることはできなかったから。(原爆開発を止めると,未完の兵器にいくらお金を使ったのか議会や国民に明らかにしないといけなくなってしまうと考えた)
ウ.原爆を完成させながら,使うのをやめた場合は,原爆を使えば多くの将兵の命が救われたと非難されるかもしれないから。
エ.その他

Hiro
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正解は,ア,イ,ウ,全てです。

ドイツが敗色濃厚でも,原爆を完成させる,そして完成させたら使うというのはスティムソンにとっては既定路線だったのです。理由は先ほどの,ア,イ,ウ,になります。ただし,シティムソンも最初からではなく,プロジェクトとその支出の全容がわかるにつれて,日本への実践使用へと傾斜を深めていったのだと思います,と有馬さんは書いています。
もしもスティムソンの説明を聞いたならルーズベルト大統領も実験ではなく,実践に使うという結論を出していたと思います,と有馬さんは書いています。
スティムソンは1945年5月2日に「暫定委員会」を設置することにトルーマンの同意をとりつけました。これは超法規的会議体で,本来このようなことを決める法的根拠がありません。これが,原爆の使用とそれに関連する重要事項を5月9日以降審議していくのです。暫定委員会のメンバーは以下の人物になります。

・ヘンリー・スティムソン 陸軍長官

・ラルフ・A・バード   海軍次官

・ヴァネヴァー・ブッシュ 科学研究開発局長官

・ジェイムズ・バーンズ  私人(もと戦時動員局長,すぐあとに国務長官)

・ウィリアム・クレイトン 国務長官補

・カール・コンプトン   科学研究開発局委員

・ジェイムズ・コナント  国防研究委員会議長

・ジョージ・L・ハリソン スティムソンの副官

(書記としてスティムソンの秘書のハーヴェイ・バンディ)

このメンバーでスティムソンと考えの違う人間は一人を除いていません。その一人とはバーンズですが,彼でさえもスティムソンは前から会っていてその考えが大枠では一致していることを知っていました。つまり,スティムソンは暫定委員会をイエスマンでかためたのです。
原爆投下は無警告で行うことがこの暫定委員会で決定されました。投下を無警告で行うことを提言したのは誰だと思いますか。有馬哲夫さんが,詳しく文書を調べた結果,ジェイムズ・バーンズ(大統領代理)しかありえないという結論に達した,ということです。
もう一度繰り返しますが,「原爆は誰が,なんのために,日本に対して原爆を使ったのか」のでしょうか。
Hiro
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ここで問題です。

問題7.日本に対して原爆を使ったのは,トルーマン大統領(とバーンズ)になりますが,なんのために使ったとあなたは思いますか。下の選択肢から選んでください。ただし,一つとは限りません。
予 想
ア.日本の真珠湾攻撃に対する懲罰として原爆を使った。
イ.人種的偏見によって「けだもの(日本人)」に原爆を使った。
ウ.戦争を早く終わらせてアメリカ人の命を守るために原爆を使った。
エ.その他

Hiro
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答えは,ア.とイ.になります。トルーマン大統領は,戦争に勝つことよりも無差別大量殺戮(りく)で相手に復讐することを優先した,と有馬さんは書いています。

Hiro
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また,その行為は,必要のない殺戮を禁じているハーグ陸戦法規に明確に違反しているとも明言しています。

Hiro
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トルーマンとバーンズの二人が真珠湾攻撃の懲罰の意味で日本に対して原爆を使ったということになります。

話を1943年に戻します。ルーズベルト大統領は,1943年から日本に対して無条件降伏を唱えていました。つまり,相手国が無条件で降伏しない限り戦争を止めないというのです。しかし,本来,降伏にあたって無条件を求めるというのはありあえません。これは当時も今もそうです。というのも,無条件だと,国民がすべて抹殺され,国土が全部奪われても文句を言えないということになります。ルーズベルトを引き継いだトルーマンも,前大統領の政策をそのまま引き継ぐと両院合同会議で宣言し万雷の拍手を浴びました。したがって,トルーマンが前任者の政策の中心無条件降伏方針を変更することには問題があります。それにトルーマンは真珠湾攻撃の復讐がしたいのです。
Hiro
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(ヒロじい)もう一つ付け加えるとすれば,有馬さんが書いた次の部分です。P.123の後ろから2行目からの文章を原文のまま載せておきます。

トルーマンは,ポツダム会談でチャーチルと原爆のことを議論したときも,原爆投下のあとの声明でも,サミュエル・カヴァートというアメリカキリスト教協会の幹部に宛てた手紙でも,繰り返し真珠湾攻撃のことに言及しています。この点は見逃せません。
つまり,真珠湾攻撃をした日本に懲罰を下したかったのです。真珠湾攻撃が彼の復讐心を掻き立てるのは,被害が大きかったというよりも,自分たちより劣っているはずの日本人がそれに成功したからです。これは根拠のない推論ではありません。
トルーマンは若いころ(正確には1911年6月22日),のちに妻となるベスに送った手紙のなかでこのようにいっています。
「おじのウィルは,神は土くれで白人を作り,泥で黒人を作り,残ったものを投げたら,それが黄色人種になったといいます。おじさんは中国人とジャップ(原文のママ。日本人の蔑称)が嫌いです。私も嫌いです。多分,人種的偏見なんでしょう。でも,私は,ニガー(黒人のこと)はアフリカに,黄色人種はアジアに,白人はヨーロッパとアメリカに暮らすべきだという意見を強く持っています」
大統領になってもこの人種偏見から抜け出せていなかったことは,彼が前述のカヴァート宛の手紙で「けだものと接するときはけだものとして扱うしかありません」と記していることからもわかります。彼が「けだもの」と呼んでいるのは「ジャップ」のことです。人種差別が厳然としてあった当時としても,大統領の言葉として著しく穏当を欠いた言葉です。
さらに付け加えると,真珠湾攻撃は,彼が考えているような卑怯な騙し討ちではありませんでした。それはハルノートを突き付けるなどルーズヴェベルトの強硬姿勢によって日本が追い込まれてしたことです。それがどれほど効いているかについて正確な情報を得ていたので,ルーズヴェベルトは日本が先制攻撃する日をほぼ正確に知ることができたほどです。
このような人種偏見と思い込みに囚われたトルーマンが,戦争に勝つことよりも無差別大量殺戮で相手に復讐することを優先したのですから,その行為は,必要のない殺戮を禁じているハーグ陸戦法規に明確に違反しています。イギリス側やアメリカ側の軍人たちが原爆の無警告使用に反対したのは,彼らもそう考えていたからだと私は思います。
(略)
ロナルド・タカキは,『アメリカはなぜ日本に原爆を投下したのか』で日本への原爆投下はトルーマンの人種的偏見と関係があるといっています。極論のように聞こえますが,彼の著書を読んでみて,私自身が中西部にいたときの経験を踏まえると,説得力を感じざるをえません。(終わり)
1945年,バーンズとトルーマンがどうしても原爆を使いたいのと対照的に,今まで原爆使用を積極的に進めてスティムソンに変化がおとずれます。これは,日本が降伏しつつあるという情報を複数受け取ったことと,原爆の威力が相当のものだということを実験結果から確かめた結果だと考えられます。
前にも書きましたが,それ以前の彼の立場は19億ドルもの巨額の資金を費やしたプロジェクトなのだから,とにかく完成させ実践で使おうというものでした。しかし,ここへきてそうした呪縛から彼が脱したことを意味します。
原爆の目的が戦争終結を早め,将兵の損失を少なくするということなら,同じ目的を達成するこの警告・降伏勧告・条件提示を先に試すべきなのです。その結果,原爆を使用する機会が失われても,目的が達成されればそれでいいのです。アメリカのマスコミや議会からあるいは叩かれることになるかもしれませんが,原爆の犠牲となる日本人ことを考えると仕方ありません。敵国人といえども人命は尊いのです。
そしてなにより,自らが開発最高責任者である原爆が戦争犯罪と結び付けられるようになることは避けなければなりません。スティムソンは原爆の使用を避けるように動いていました。
Hiro
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(ヒロじい)アメリカ政府の中にも理性的に考える人がいたということです。どこの国の政府にも当てはまりますが,政府に関わる人々は多くの選択肢の中から何が一番良い選択肢かを考えます。選択肢の中でどの考えに決まるかは,国際関係や政府内の人の力関係などの要素が絡んでいるのでどうなるか誰にも分からない,と言っていいと思います。

Hiro
Hiro

「原爆は誰がなぜ使用したのか」という問いの答えは,「トルーマン大統領が真珠湾攻撃の復讐のために使った」と,いえると有馬さんは書いています。

Hiro
Hiro

それでは,「Ⅲ原爆は誰がなぜ拡散させてしまったのか」について,みていくことにしましょう。

Hiro
Hiro

有馬さんは,次のように書いています。

私たち日本人は,2発の原爆投下を終わりと感じています。この新兵器を使ったあと日本が降伏して戦争が終わったので,そう感じるのです。しかし,世界的視野から見れば,原爆投下は始まりです。つまり,現在の状況に至るまでの核兵器の拡散の始まりです。今の状況の始まりなのです。すべてではないにしても,世界の多くの人々はそう感じています。
ルーズベルト大統領はヤルタ会談のあと,1945年4月12日に死去してしまいました。したがって,原爆の使用の決定の場と同じく,スティムソンの役割が重要になってきます。スティムソンの考えは,ソ連も含めた国際管理を進めるべきというものでした。しかし,バーンズとトルーマンが国際管理に反対しました。彼ら2人の論理は以下の通りです。
今は戦争中なのだから,一日も早く勝利を得るため,原爆を早く完成させることを最優先させるべきだ。完成したなら,19億ドルもの血税を注ぎ込んだのだから,戦争を早く確実に終わらせるために使わなければいけない。軍事的に使うとなれば,それは高度の軍事機密なのだから,ソ連はもちろん,他国に漏らすわけにはいかない。使ったあとは,世界各国がこの兵器について知り,ソ連も含めて先を争って開発競争をすることになるので,その中で優位を保たなければならない。だから情報提供などできない。
Hiro
Hiro

科学者たちは,原爆についてどう考えていたのでしょうか。

原爆の完成が近づくにつれて,科学者たちは,ソ連を加えた国際管理ができなくなるので実践で日本に原爆を使用してはならないと述べた通称「フランク・レポート」をシティムソンに提出します。それは,18貢にもなる「予言の書」になっています。すなわちソ連の核武装と核軍拡競争の世界的拡大の動機とメカニズムを極めて明快に説明しています。注目すべきことに,アメリカとソ連の核戦争すらシミュレーションして,アメリカに不利だとまでいっています。
Hiro
Hiro

ここで最後の問題です。

問題8.トルーマンは,国際管理なしで,どうやってアメリカを原爆の脅威から守ろうと考えたのでしょうか。あなたは,どう思いますか。次の選択肢から選んでください。答えは1つとは限りません。
予 想
ア.アメリカ・イギリス・カナダの3ヵ国で97%のウラン鉱石を独占しているので,ソ連は原爆を作れない。
イ.ソ連が仮に原爆を1,2発くらい作れたとしても,アメリカが作る原爆の圧倒的数の前では問題にならない。
ウ.ソ連の科学技術がアメリカよりも遅れているから,ソ連が原爆を持つのに20年から30年かかると信じていた。
エ.その他

Hiro
Hiro

正解は,ア,イ,ウ,の全てです。

科学者たちの予言どおり,アメリカに遅れること4年の1949年8月29日に原爆実験に成功しました。ウラン鉱山の開発によって,アメリカの保有数にはおよばないものの,アメリカの予想をはるかに上回る数の原爆を作れることも証明しました。
連の原爆保有を止めることができなかったのを見て,国連の常任理事国の1つであるイギリスも1952年に原爆実験を行い,成功させます。これに同じく常任理事国のフランスが1960年に,中国が1964年に実験を成功させて続きます。国連は拒否権を持つ常任理事国の核武装を止めることができないのです。
1974年には常任理事国ではないインドが核武装しました。同じ理由でインドの隣国で敵対関係にあるパキスタンが1998年に核保有します。2006年には国際法上は未だアメリカと戦争状態にある北朝鮮も核武装しました。もはや歯止めはありません。日本に原爆を使用するまえに築いておかなければならなかった国際管理体制がないからです。
トルーマンは個人的な感情から原爆を使用することを先行させ,そのあとも意味のあることはまったくせずに終わってしまうのです。
今の国家のトップにいる人たちの周囲には,優秀な閣僚,側近,官僚,科学者はいるでしょうか。そうだとしたら彼らの英知に素直に耳を傾け,常に理性的な判断ができるでしょうか。「そうではない」と,思うのなら,今までの疑ったことのないものを疑い,考えたことがないものを考え,したことがないことをしてみなくてはなりません。同じことを繰り返していては,いつヒロシマ・ナガサキの過ちが繰り返されるかわかりません。

Hiro
Hiro

私(ヒロじい)は当時,教師としてこんな大事なことを子ども達に教えてきませんでした。いや,私は何も知らなかったのですから,教えられるはずもありません。「こんな大事なことは日本人であれば全員知っておくべきだ」と,思いレポートに書かせてもらいました。

Hiro
Hiro

最後までお読みいただき,ありがとうございました。

Shige
Shige

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