岸田秀著『続・ものぐさ精神分析』(中公文庫1982年7月発行)の紹介
岸田秀氏による『続・ものぐさ精神分析』の中から<アメリカの精神分析>について紹介します。自分にとっては,目からうろこの内容でした。みなさんにお伝えしたくて,本文に沿っていくつかの問題を考えました。その問題を気楽に考えながら読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
いきなりですが,さっそく問題です。
問題1.岸田秀氏が考えるアメリカの精神的な病名は何であると思いますか。次の予想の中から1つ選んでください。
予 想
- ア.依存症的
- イ.適応障害的
- ウ.精神分裂病的(統合失調症的)
- エ.うつ病的
- オ.強迫的な性格神経症的
- カ.その他
正解は,オ.強迫的な性格神経症的になります。
経験の欺瞞は,自我がある程度発達したのちに行われ,より能動的,主体的である。
つまり,経験は当人の都合のいいように偽られている,と岸田氏は書いています。より詳しい内容については,後でお知らせすることにします。
ここで問題です。
問題2.そもそも個人の強迫的な性格神経症とは,どんな症状(状態)なのでしょうか。次の予想から1つ選んでください。
予 想
- ア. 特定の何かに心を奪われ、「やめたくても、やめられない」状態
- イ. 自分の置かれた環境にうまく慣れることが出来ず、社会生活に支障をきたす状態
- ウ. 思考や行動、感情を1つの目的に沿ってまとめていく能力が長期間にわたって低下し、その経過中にある種の幻覚、妄想、ひどくまとまりのない行動が見られる状態
- エ. 精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態
- オ. 頭の中にしつこく浮かぶ不快な考えやイメージ(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消そうとするくり返しの行為(強迫行為)が止められず、日常生活や精神状態に大きな影響をおよぼす状態。
正解は,オ. 頭の中にしつこく浮かぶ不快な考えやイメージ(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消そうとするくり返しの行為(強迫行為)が止められず、日常生活や精神状態に大きな影響をおよぼす状態,になります。
私にとって,具体的な症状とはどんなものなのか,を理解することが難しいです。読者にとって分かりやすいように,岸田氏は例え話を書いています。そこで,その例を抜き出すことにします。
岸田氏の例えは,以上になります。私は,とても分かりやすい例だと感じました。
アメリカはなぜ好戦的なのか,この本を読む前の私には全く理解できませんでした。アメリカが好戦的な例として戦った国をあげると,日本やベトナム,イラクなどがあります。アメリカがなぜ好戦的なのか,岸田氏の例によって私は納得できました。
それでは,なぜアメリカは好戦的な国になったのでしょうか。アメリカの歴史をみていきたいと思います。
ここで,問題です。
問題3.アメリカが好戦的になったきっかけは何だと岸田氏は書いていると思いますか。次の選択肢から1つ選んでください。
予 想
- ア.17世紀のはじめ,ピルグリム・ファーザーズがメイフラワー号に乗って新大陸にやってきたから。
- イ.アメリカ原住民(インディアン)との事件に対する認識から。
- ウ.メキシコからテキサスを奪ったから。
- エ.ハワイを併合したから。
- オ.原子爆弾や都市への大量爆撃などによって日本の一般人を虐殺したから。
- カ.その他
正解は,イ.アメリカ原住民(インディアン)との事件に対する認識から,になります。ここでも,岸田氏の見解について彼の本から抜き書きしたいと思います。
アメリカの歴史は経験の欺瞞からはじまっている。
17世紀のはじめ,メイフラワー号に乗って新大陸にやってきたピルグリム・ファーザーズは,アメリカの自由と民主主義の始祖とされ,聖徒とよばれているが,オヴィッド・デマリスの『暴力の国アメリカ』(猿谷要『新大陸に生きる』における引用)によれば,上陸した聖徒たちは「インディアンの墓地を荒らし,埋めてあった穀物を盗み」,さらに,聖徒の代表の一人,「スタンディッシュは,酋長と彼の弟で18歳になる若者,その他もう2人のインディアンを自分の執務室に招待して食事をすることにした。
名誉を重んじ,客を丁寧にもてなすのがインディアンの掟である。だから彼らは,この招待を受けても危険はない,と考えた。だが間もなく,それが大変な間違いであったと気づくのだ。彼らが部屋に入ったとたん,ドアに錠がかけられた。
スタンディッシュは自らナイフを振って,一人のインディアン戦士をずたずたに切り刻んだ。一方彼の部下たちは,酋長ともう一人の戦士を剣でめった切りにした。18歳の若者だけは殺されなかった。あとで皆の前にひきずり出し,絞首刑にするためであった。……スタンディッシュはインディアン酋長の首をもって,意気揚々とプリマスに帰還した。人々は歓喜して彼を迎えた。彼はその首を植民地の防塞の杭の先端に釘で打ちつけた。この首は長年の間,プリマス名物の一つとして残った」のである。
この事件が事実そのままに,信頼と尊敬の態度で接してきた人たちに対する裏切りと残忍な殺害の事件として認識されていれば,悲劇はこれだけにとどまり得た。
問題は,そういうことをした人たちがアメリカの自由と民主主義の礎石(そせき)を築いた聖徒とあがめられたことである。その結果,自由と民主主義は裏切りと暴力を正当化する口実に過ぎなくなり,裏切りと暴力が裏切りと暴力ではなく,自由と民主主義の現れであることを証明するために,際限なく強迫的に裏切りと暴力が繰り返されることになった。
アメリカ人は,多民族,多人種を見ると,裏切りと暴力を使って,アメリカの自由と民主主義を押し付けたい強迫的衝動に駆り立てられるのである。そして,前述の例の,目下(もっか)の者をいじめてきたえてやっているつもりの性格神経症者と同じように,主観的にしばしば善意なのである。
岸田さんのアメリカの精神分析のように,ある国が「俺には力がある。だから,俺の正義感によっておまえをやっつけてやる」と言われると,やっつけられた者には「これは,どうすることもできないようなことなのか?」という無力感が残ります。
現代は,一応日本の国の中では個人の人権や自由が守られている,という呈になっています。また,世の中には独裁国家もあります。国同士のもめ事は,一応,国同士で解決することになっています。その場合,話し合いや戦争という解決方法があります。
国を取り締まる法律や権限がどの国にも無い以上,これから先も力の強い国が好き勝手にする割合が多くなるのでしょうか。それとも人類の英知で,民主主義的に解決できるようになるのでしょうか。仮に,地球上の問題が平和的に解決できるようになるとしても,恐ろしいほどの時間が必要なことは,誰の目にも明らかです。
IT(Information Technology情報技術)の発達によって,暗号通貨や芸術,文化,メディアなどに対する庶民の自由度が大きくなってきました。これからも加速度的にいろいろな自由が庶民にもたらされるでしょう。また,社会の在り方が大きく変化して,人間同士のつながり方や社会の価値観も変わっていくことでしょう。
これから先,世の中がどのように変化していくのか,私には全くわかりません。「現実に起きていることは,人々にとって良いことである」と誰かが言いました。そうであることを願って,私はこのレポートを閉じます。
最後まで読んでいただき,ありがとうございました。