第1回 実践報告研修会用レポート

仮説実験授業の実践
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Hiro
Hiro

私は,あるゼミで科学教室(仮説実験授業)を担当しています。その施設で,ゼミ生の成長のための研修会を開きました。その研修会に提出したレポートの内容です。

担当者 ヒロじい

頻 度 月1回程度

仮説実験授業とは何か

「仮説実験授業って何?」と思っておられる方も多いと思います。そこで,仮説実験授業について,ウィキペディアに書かれていることを基に簡単に紹介させていただきます。
仮説実験授業(Hypothesis-Experiment Class(HEC))は、科学上の最も基礎的な概念や原理・原則を教えることを意図した授業である。1963年(昭和38年)に板倉聖宣が科学史研究の成果をふまえて提唱した。仮説実験授業は授業の内容をすべて規定した「授業書」と称するテキストを用い、授業運営法にしたがって授業を進める。仮説実験授業は子どもたちが様々な側面からの問いかけと実験を楽しく繰り返しながら、授業書が目的とする科学的認識に至る経験ができるように作られている。授業書による授業が終わる頃には、ほとんどの子どもたちが,自分が獲得した科学的認識を使って、未知の問題の結果を予想できるようになる。

サンデーゼミでの目標

今回授業をするにあたり,自分なりの(授業を受けるゼミ生に対する)目標を掲げました。3点あります。
①仮説実験授業(科学)そのものを楽しむ
②科学的な考え方を身につける
③自分の考えや感情を言語化できる(例えば,「なんとなくそう思った」や「とても楽しかった」でも一応よしとするが,できるだけ詳しく表現できる方がより良いと考える)
3点について自分の考えを説明します。
①<仮説実験授業(科学)そのものを楽しむ>について
楽しく学べるということは,意欲的に学ぶことにつながるのではないかと,私は考えています。つまり,意欲的に学ぶことで,将来的に自分に対する自信と学ぶことに対する意欲(仮説実験授業以外であっても)が増大するのではないかと考えます。例えば,ゼミ生が困難な場面に直面したときに,自分は解決できるかもしれないと思えたとしたら,この授業は成功だったのではないかと考えます。
ゼミ生が楽しく学べたのかどうかの評価については,授業の終わりに授業の評価(たのしさ度)と感想をゼミ生に書いてもらうことによって,判断します。
②<科学的な考え方を身につける>について
科学的な考え方とは,<仮説(予想)をもって問いかけて,実験(実践)結果について何かしらの自分の考え方を得ることができること>と,私は考えます。例えば,ゼミ生がピカピカ金属光沢をしているものを見かけたら,「それは電気を通すに違いない」と考えることができたら,この授業は成功だったのではないか考えます。
科学的な考え方が身についたかどうかの評価は,ゼミ生の授業中の発言や授業後の感想文によって判断します。
③<自分の考えや感情を言語化できる>について
自分の考えや感情を言語化できるということは,自分の思いや感情を相手に伝えることができるということです。言語化することで,自分の考えがよくわかり,結果の良し悪しが自分で判断できることになります。また,自分の考えや感情を言語化することで,相手とコミュニケーションがとれるようになるための第一歩につながるのではないかと考えます。例えば,ゼミ生の相手に対する自分の思い(こんなことは自分にしてほしくないとか,言ってほしくないなど,反対にこんなことをしてほしいとか,こんなことをしてくれて自分はうれしいなど)を伝えることで,友人や知人との関係性が将来的に少しでも良好になれば,この授業は成功だったのではないか,と私は考えます。
自分の考えや感情を言語化できたかどうかの評価は,ゼミ生の授業中の発言や授業後の感想文によって判断します。

取り組んだ内容と取り組みの成果

私が実施した仮説実験授業について,ゼミ生の授業に対する評価及び感想を基に振り返ってみます。4月より以下の仮説実験授業を実施してきました。「空気と水」(4・5月)と「自由電子が見えたなら」(6・7・8月)です。

①<仮説実験授業(科学)そのものを楽しむ>について

ここにゼミ生による仮説実験授業に対する授業の評価を載せてみます。

「空気と水」(4月)に対する評価

  • 5.とても楽しかった   6人
  • 4.楽しかった      2人
  • 3.どちらともいえない   0人
  • 2.つまらなかった     0人
  • 1.まったくつまらなかった 0人

「空気と水」(5月)に対する評価

  • 5.とても楽しかった     5人
  • 4.楽しかった        2人
  • 3.どちらともいえない     0人
  • 2.つまらなかった       0人
  • 1.まったくつまらなかった  0人

「自由電子が見えたなら」(6月)(第一部 電気を通すもの通さないもの)に対する評価

  • 5.とても楽しかった      5人
  • 4.楽しかった         3人
  • 3.どちらともいえない    0人
  • 2.つまらなかった      0人
  • 1.まったくつまらなかった  0人

「自由電子が見えたなら」(7月)に対する評価はありません。残念ながら,ゼミ生に授業を評価してもらう時間がとれませんでした。

「自由電子が見えたなら」(8月)に対する評価

  • 5.とても楽しかった      4人
  • 4.楽しかった         2人
  • 3.どちらともいえない    0人
  • 2.つまらなかった      0人
  • 1.まったくつまらなかった  0人
これらの評価から言えることは,ゼミ生が仮説実験授業を楽しんでいることは明白です。全ての授業で,ゼミ生が<とても楽しかった>,または<楽しかった>を選んでいるからです。

②<科学的な考え方を身につける>について,と③<自分の考えや感情を言語化できる>についての考察は,ゼミ生の感想や授業中の発言から判断します。

「空気と水」についてのゼミ生の感想

  • 科学のリレーがおもしろかったし,楽しかったです。空気と水のいけんをゆうのがむずかしかったです。また,リレーをやりたいなと思いました。(Aさん4)
  • リレーがたのしかった。(よそうを)かえてよかった。科学がむずかしかった。くうきがでて,みずがいっぱい。(Bさん)
  • 木下先生がわかりやすく教えてくれてよかった。さいしょは,わからなかったけど,だんだんわかりました。科学のこたえはむずかしかったけど,かんがえる力がついたと思います。(Cさん5)
  • よくでたので,とても楽しかった。たのしかった。またやりたいです。(Dさん5)
  • 空気と水を勉強して楽しかった。またやりたいです。(Eさん4)
  • 今日は,水の空気とあきカンのあなのじっけんをしてみて,よくわかりました。とっても楽しかったです。(Fさん5)
  • 空気と水のじっけんがおもしろかったので,いい勉強になりました。家でやってみようかなと思いました。(Gさん4)

「自由電子が見えたなら」についてのゼミ生の感想

  • 今日は初めてのことが多かったのですが,いい勉強になりました。(Hさん5)
  • アラザン,じゆうでんしがたのしかった。(Iさん5)
  • 今日は,お金とアルミホイルをじっけんしてみて,とてもよくわかりました。ほとんどせいかいをしてよかったです。またしたいと思います。(Jさん5)
  • じっけんのはなし,たのしかったです。(Kさん4)
  • 今日は,でんきのじっけん。こぜにがとおるかわからなかったので,ほどほどとおるびっくりしました。でも楽しかった。いいべんきょうになりました。(Lさん4)
  • お金で,電気をとおす,内容が楽しく学べました。クイズ形式で,電気のことを学べためになりました。(Mさん4)
  • 今日は,よそうをしたり実験もしたりしました。実験してみてよくわかりました。とても楽しかったです。(Nさん:5)
  • 実験してよくわかりました。楽しかった。(Oさん:5)
  • 今日よそうがむずかしかった。(Pさん:5)
  • じっけんを電気をとおすのがおもしろかったです。いいべんきょうになりました。科学たのしかったです。(Qさん:4)

(注意:―――はヒロじいが引きました)

②<科学的な考え方を身につける>について

Hiro
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例えば,「紙は電気を通さない」とか「ピカピカ金属光沢しているものは電気を通す」など授業中のゼミ生の発言から判断すると,<ゼミ生は科学的に考えることができた>と言っていいのではないか,と私は思っています。

Hiro
Hiro

ゼミ生全員が「紙は電気を通さない」と断言したときには,私は「すばらしいなあ」と思っていました。今までの私の経験から,「千円札はもしかしたら電気を通すかもしれない」と,迷う子どもも多少いたからです。

Hiro
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アラザンが電気を通すかどうかの問題でも同じことが言えます。これについてもゼミ生全員が「アラザンは電気を通す」と断言したからです。<一度学んだことは,迷いなくすぐに使える>ということは,学んだらすぐに<学びを生かせる>んだ,と私は驚きました。逆に,そのことは,ゼミ生にとってこれからの課題でもあるように感じました。

Hiro
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上手に説明できませんが,果たして<学びを生かせる>それだけでいいのか,という疑問が自分の中に生まれたのは事実です。具体的に言うと,<無批判的に全てを受け入れても大丈夫なのか>,おそらくそういう事だと思います。私がゼミ生の考えを聞けなかったからそんな疑問を考えたのかもしれません。現象的には何の問題もなく,素晴らしいことなのですが。

③<自分の考えや感情を言語化できる>について

Hiro
Hiro

「なんとなくそう思った」や「とても楽しかった」でもよしとする,と私は書いています。この点については,<ゼミ生は目標を達成している>と考えてよいと思います。

Hiro
Hiro

ただし,ゼミ生の授業後の感想を読む限り,残念ながら<自分の考えや感情を言語化する>ことはできていません。これについては,相当レベルの高い認識だと考えますので短期間で言語化できるようになるのは難しいと考えます。

Hiro
Hiro

<自分の考えや感情を言語化できる>ようになるためには,本を読んだり,相手と会話したり,何かの機会に発言したり,自分の考えをまとめたり,ゼミでのいろいろな活動などの蓄積によってできるようになるものだと私は考えています。仮説実験授業を受けることは,ゼミ生の思考や感情を言語化できるようになるための活動の一つだと捉えても間違いではないでしょう。

今後の見通し,活動の展開で考えていること

Hiro
Hiro

ゼミ生に書いてもらった感想から判断すると,仮説実験授業がゼミ生に良い影響を与えていることは,否定できないと考えています。それは,ゼミ生が仮説実験授業を楽しみながら受けているからです。

Hiro
Hiro

ゼミ生の感想の中に,「家でやってみようかなと思いました」とあるように,学ぶことが意欲的になっている一面も見られました。「空気と水のいけんをゆうのがむずかしかったです」ということは,何とかして自分の意見を言語化したいという意欲がみられたということです。

Hiro
Hiro

「(よそうを)かえてよかった」ということは,問題にたいして自分でよく考えているということになります。「かんがえる力がついた」「いい勉強になりました」「電気のことを学べ,ためになりました」「実験してみてよくわかりました」「実験してよくわかりました」とあるように,自分で実験結果を認識できたことが素晴らしいと思いました。

Hiro
Hiro

仮説実験授業によってどんな成果が上がったのか,と問われると,部分的ではありますが,<科学的な考え方を身につけることができた>と思っています。また,自分の考えや感情をある程度<言語化することができた>といえるのではないでしょうか。科学の授業を楽しんでいたことは言うまでもありません。

Hiro
Hiro

 仮説実験授業をはじめて半年あまり,あと半年仮説実験授業を続けることで成果がどのように変化していくのか見守っていきたいと思います。

Hiro
Hiro

後半の仮説実験授業については,感想文の書き方を考えないといけないかもしれません。例えば,<書くポイントを絞ってもらう>とか,<○○については,必ず書いてください>など課題を与えることも必要かもしれません。

Hiro
Hiro

授業中においても,<○○を,よーく見てください>とか,<○○の変化に気をつけて見てください>などの注意喚起することも必要かもしれません。自分なりに授業の進め方を工夫しながら,これからも授業を続けていきたいと思います。

Hiro
Hiro

最後まで読んでいただき,ありがとうございました。

Shige
Shige

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